「俺が教えようか、俺もそこやってるし」

「高田先輩が?」

「うん、佐山は家のこともあるんじゃない? 星野ちゃんのことは任せて」


 高田先輩は「ね、星野ちゃん。それならいいでしょ」と私に微笑んだ。

 確かに高田先輩となら、よく勉強で学校に残ってるって言っていたもんね


「佐山も、いいだろ? もうすぐ、香席もあるから稽古があるって」

「そ、そうなの!? じゃあ、佐山くんは帰って稽古しないとだよ! 知らなくて付き合わせてごめんね」


 私がそう佐山くんに言って手を合わせて謝るとボソッと何か言ったけど何を言ったのかは聞こえなかった。

 普通に話せるようになったのに今度はなぜか不機嫌になってしまった彼は「今日は帰る」とだけ言って和室から出ていってしまった。


「……本当、子どもだなぁ」

「え、何を言ってるんですか」

「いや? なんでもない、なんでもない。さ、やろうかね〜」



 そんなのんびりした口調で言う先輩を見て、さっきもらったプリントを眺めた。