「……佐山は、茶道の資格で中級を持ってるんだよ。今日は道具が(そろ)ってないけど、道具があればお茶の先生並みにできる」

「そうなんですか……すごいですね、佐山くんって」

「まぁ、茶道は六歳から始めたらしいし」


 さすがすぎる……と思っていれば先輩がケーキ屋の箱を開けて「どれがいい?」と聞いてきた。


「私が選んでしまっていいのですか?」

「だって、星野ちゃんが主役だって言ってるでしょ」

「ありがとうございます……先輩」

「いいよ、いいよ」


 私は箱の中にあるレアチーズケーキを選び、佐山くんが点ててくれた抹茶をいただきながら食べ始めた。

 初めて、お母さん以外の人とこんなふうにケーキを食べるなんてなかったからとても楽しい時間を過ごせた。