じわじわっと頬に熱がたまって、私はたまらず顔を覆った。必死に羞恥に耐えていると、上から殿下の感心しきった声が聞こえてきた。
 
「ほう。短い単語でそれだけの想いを伝えられるとは、なかなか便利な言葉だ。アデルは物知りだな」

「え、ええ。お褒めにあずかり、光栄です……」

「そうか。だとすると君は、俺の意外な一面を知って好意を抱いてくれた、ということか」

「えっ!!!」

 シリウスの爆弾発言に、思わず顔を上げる。

  言葉を失う私に、彼は「なんだ、違うのか?」と切なげな顔で追い打ちをかける。
 
 
(そんなシュンとした顔されたら、正直に白状するしかないじゃないっ!)

 
 小さな声で「そうです」と呟いた瞬間、とうとう恥ずかしさが限界突破。ボンッと音がしそうな勢いで、私の顔が一気に熱くなった。

 きっと今の私は、ゆでだこにも勝る赤ら顔だと思う。

 それを見て、シリウスが珍しく破顔する。
 
 笑いを堪える彼を、私は涙目でにらみ上げた。
 
「私をからかいましたね! 今日の殿下は意地悪です!」

「いや、すまない。君があんまりにも表情豊かだから、つい。どうしてだろうな、君と居ると楽しくて、色んな表情を見てみたくなる」

「まったくもう!」

 腰に手を当て、まだ熱の引かない顔で怒ったふりをすると、殿下が一層楽しげに笑った。
 
 まるで少年のような表情に、ふと言い知れぬ懐かしさを覚える。
 
 それはシリウスも同じだったのか、ひとしきり笑い終えると、不思議だな――とこぼした。

「君と話していると、やけに懐かしい気持ちになる。こんな感情は久しぶりだ」