「『この冷血そうな男が恋の話をするなんて意外だ。すさまじく似合わない』と、顔に書いてある」
 
「ざんねん!半分正解で半分不正解です! 意外だとは思いましたけど、似合わないなんて思ってませんわ」

(むしろ、すごく胸キュンとしたというか、ものすごいギャップ萌えを浴びせられて放心してしまったというか……)

 
「きゅん? ぎゃっぷもえ? 以前から思っていたが、君はときどき、不思議な言葉を使うな」

「えっ、声に出てました!?」

 心の中で思っていたはずなのに、うっかり声に出してしまっていたらしい。シリウスは顎に手を当て、何やら考え込んでいる。

「今のは、共和国かどこかの若者言葉か? 聞いたことのない単語だ。どういう意味だろうか」

「えっ!? いや、大した意味では……」
 
「知らない言葉があると、意味を知りたくなる性質(たち)なんだ。それで?」

 どうやら逃がしてくれそうもない。観念した私は、おずおず説明を始めた。

「『胸キュン』というのは、感情表現の一種で、胸が高鳴り、切なく締め付けられるという意味です。『ギャップ萌え』は、相手の意外な一面を知って、親近感や好意を抱く……という意味かと」

 説明しているうちに、激しい羞恥心がこみあげてくる。
 
 なぜ私は、真顔の殿下に『胸キュン』とか『ギャップ萌え』の説明をしなければならないのだろう。こんなの拷問というか、羞恥プレイだ。

(うかつに前世の言葉を喋ってしまった私が悪いのだけれど……。恥ずかしくて居たたまれない……っ)