「ちぇっ、なんだかいつの間にか良い雰囲気じゃないですかぁ~。オレだけ除け者なの、さみしーなぁ」

 オレも混ぜて下さいよ~!とライアンが私に近付いた瞬間――彼の顔の真横を、ヒュンと何かが勢いよく通り過ぎた。

 やや遅れて、ライアンの横髪が数本、はらりと切り落とされ風に舞う。
 ライアンの真後ろにある壁にはなぜか、フォークが刺さっていた。

 ……フォークって、あんなに高速で飛ぶんだ……と感心しちゃってる私がいる。
 

「すみません。お皿を洗っていたら、お嬢様に寄りつく害虫が見えたので。つい、手がすべりました」

 いつの間にか側にいたソニアが淡々と謝罪し頭を下げるが、目は笑っていなかった。

 青ざめた顔のライアンが、口の端をひくりと痙攣させる。

「手がすべったかぁ、それは仕方ないなぁ……じゃない! オマエ、いっつもオレを殺そうとしやがって!」

「うちの大切なお嬢様に、下心満載のうすっぺらな口説き文句を言うからです」

「美人を褒めるのは、王国の男として当然のマナーさ。あっ、ひょっとして嫉妬? いやぁ、冷血侍女のソニアちゃんも、可愛いところがおありで……って、や、やめろ! フォークを構えるなッ! 」

「安心してください。今度は確実に当てますので」

「おい、怖すぎだろぉ~!」
 
 言い争いながらじゃれつくライアンとソニアを、ほほ笑ましく見守る。
 
(いつの間に、こんなに仲良くなったのかしら?)