「怪我はないか」
 
 騎士服に身を包んだ銀髪碧眼の男性が振り向く。私は驚きつつ頷いた。

「はい、お助けくださりありがとうございます。シリウス殿下」

 シリウスは頷き返し、不届き者に視線を戻した。

 一方のダニエルは、ヘビににらまれた蛙状態。青ざめたまま固まっている。

 
「あ、あなたさまは……。ち、違うんです、これは、その女が悪くて」

「詳しくは騎士団で聞く。連れて行け」

 命令を受けた騎士がダニエルの両脇に手を入れ、引きずるようにして連行する。

 シリウスが「今宵の宴、存分に楽しんでくれ」と周囲に告げると、群がっていた野次馬たちが蜘蛛の子を散らすように去っていった。

「出口まで送ろう」と言うシリウスに従い、大人しく少し後ろを着いていく。