「たとえ殺されそうになっても、わたくし達は姉妹。だから、許してさしあげます」

 両親が『なんて心優しい子なんだ』『まるで聖女よ』と妹を褒め称える。周りの使用人らも深く頷き、絶賛する。
 
 一方、私へ向けられるのは、疑いと憎悪のこもった眼差しだけ……。


「早く連れていけ」

 父の命令を合図に、私は部屋から連れ出される。
 
 その時、ミーティアが私を見つめたまま目を細め……にぃんまりと笑った。
 
 
 それは紛れもない、悪意と優越感にまみれた嘲笑(ちょうしょう)だった。
 
 
 抜け殻みたいになった私の体を、使用人たちがぞんざいに引きずりながら進む。暗く冷たい地下室にたどり着くと、荒々しく室内に放り込まれた。

 ギィと軋んだ音を立て、扉が固く閉ざされた。あたりは真っ暗。

 助けて! と叫んで扉を叩くが、びくともしない。

 助けは来ない。味方はいない。親すら私を信じない。

 救いはない。