【コミカライズ配信中・書籍化決定】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

 一歩大きく踏み出した拍子に、ポケットからスマホがぽろりと転げ落ちた。私は慌ててしゃがみ込み、傷を確認したり、電源ボタンを押したりする。

 明るくなった画面に【21:00】と時刻が映し出された。
 
 
「電源よし、画面割れてない、はぁ、よかったぁ」
 
 
 安堵のため息をついた瞬間、正面から激しい金属音が聞こえてきて――。

 
 強風で飛ばされた巨大看板が激突し、私は死んだ。

 
 
(あぁ、私の人生って、何だったのかな)

 
 頑張った営業成果は後輩に横取りされ、タヌキ上司に叱られて。
 腹立たしくて悔しいのに、何も言い返せず我慢ばかり。

 まだ二十代も始まったばかりなのに。
 こんなに早く死んじゃうなら、もっと自分を大切にすればよかった。


(悔しい……!)

 
 後悔と未練が渦を巻く。こんなの死んでも死にきれない。
 
 薄れゆく意識の中で、私は決意した。
 想いを、意志を、忘れないように魂に強く深く刻み込む。

 
(もし、生まれ変わったら、今度は絶対に泣き寝入りなんかしない)

 
 ――踏みつけられたまま終わるなんて、二度とごめんだ。