「なんだか、眠くなってきましたね」

「ああ。そうだな」

「あなた。私と結婚してくれて、ありがとうございます」

「それは俺の台詞だよ。ありがとう、アデル。君のおかげで、とても良い人生だった」

「私もです。もし来世があるとしたら、また私を、あなたの側に置いてくれますか」

「当たり前だ。どこに居ても、どんな姿でも、俺がまた君を見つけるよ。だから安心しなさい」
 
 最愛の夫の言葉に、アデル様が心から幸せそうに笑う。

 それきり、声が聞こえなくなった。

 
 ……二人とも、眠ってしまったのだろうか。


 ソニアは部下からブランケットを受け取り、足音を消し近付く。

 そっと膝にかけようとして――静かに涙を流した。


 ほほ笑み寄り添いながら、二人は天へと旅立っていた。
 

「お休みなさいませ。シリウス様、アデル様。私も、夫のライアンも、お仕えできて幸せでございました」
 

 幸せそうに眠る主を見つめ、祈りながら、ソニアは深々と頭をさげた。


 
 シリウスとアデルは、同じ日、同じ時、同じ瞬間に今世を終えた。

 願わくば、いつかお二人の魂が、また別のどこかで、どうか出会えますように――。


~ END ~