「私が断るわけないじゃない。……ただ、陛下と円卓の許しが得られるか。私はそれが心配よ」

「それなら問題ない。父上の許しを得ているし、円卓会議でも承認をもらっている」

「そうなの!? よく許してもらえたわね……。円卓貴族あたりは『平民なんかと結婚するくらいなら、うちの娘はどうです?』とか言うものだと思っていたわ」

「確かに、縁談を持ちかけてくる貴族らは多かった。が、『アデル以外に、俺の心と体は反応しない。よって世継ぎも作れない。王家の正当な血筋は断絶するであろう』と脅しをかけたら、皆引き下がった」

「脅しって……。シリウス、あなた大人になって、随分とずる賢くなったわね」

「こんな俺は嫌いか?」
 
 照れて視線を外しながら「嫌いなわけ、ないじゃない」と呟けば、激しく唇を奪われた。

 キスの合間に、シリウスが言う。

「心配するな。何が起きても、俺が対処する」

 その言葉を遮るように、自分からキスをする。一瞬唇が離れたタイミングで、私は言った。

「違うわ、シリウス。夫婦はね、二人で頑張るの。この先何が起きても、私はあなたと一緒に戦う。だからずっと、そばに居てね」

 シリウスがふんわり表情をゆるめ、爽やかに笑った。
 
「ああ。死が俺たちを分かつまで、共に生きよう。アデル――」



 草花が咲き乱れ、希望の光に満ちた、春爛漫(はるらんまん)の日――。

 アストレア王国に若き王と王妃が誕生した。