元聖女のおぞましい悪行の数々は、瞬く間に国全体へ広まった。

 街の人々を誘拐したミーティアの両親も捕まり、娘と三人、アストレア監獄で嘆きの日々を送っている。

 辺境で軟禁生活を送るメイナードは「でんかぁ、あたしを裏切ったわね……」というミーティアの幻聴に悩まされ、精神を(むしば)まれているという。
 
 罪を犯した者たちは、おのおの自業自得により社会的に抹殺された。

 
 
 ……ダニエルを除いては。
 
 彼は聖女の悪事を証言するのと引き換えに、とある『条件』をシリウスに提示していた。

 その条件とは『シリウス殿下が王位に就いた暁には、僕を宰相にしてほしい』というものだった。どこまでも野心的な男だ。

 ミーティアの逮捕後、ダニエルは喜び勇んでシリウスの元を訪れ、こう言った――。