王の隣に控えていた宰相が懐中時計をじっと睨み、蓋をとじて懐にしまった。
 
 モノクルをかちゃりと押し上げると、コホンと一つ咳払い。


「これより、王位継承の――」

 
 宰相が開会宣言を行おうとした瞬間、ギィと重い音が響き、広間の扉が開いた。

 この場にいる全ての人が、一斉に振り向く。
 
 
 人々が固唾を呑んで見守る中、男が赤いカーペットの上を堂々と歩く。
 

「遅くなり申し訳ございません。シリウス・イヴァン・アストレア、ただいま参上いたしました」

 
 王の御前で膝をつき、胸に手を当て優雅に一礼するシリウス。
 
 
 まさかの出来事に、あたしは「嘘でしょ……」と呟いた。