その言葉を聞いて、私は思わず絶句してしまった。シリウスなら、もっと釣り合う貴族令嬢が沢山いるのに……。

 どうして、こんな面倒な事情を抱えた自分に執着するのか、分からなかった。

 疑問をそのまま口にすると、彼は迷いのない口ぶりで、こう告げた。

『君と生きて一緒に居られるのなら、何一つ面倒だとは思わない。言っただろう? 俺の執着心をなめるなと』

 
 こんな経緯があり、結婚話は一旦保留中。とはいえ、シリウスは私との結婚に向けて、水面下で色々と根回しをしているらしい。

 しかもいつの間にか、私の両親――シレーネ夫妻――への挨拶もしており、気付けば私達の仲は家族公認となっていた。

「なんだか、着実に外堀を埋められている気がする……」

 シリウスから送られてきたプレゼントの箱を開きながら、呟く。

 箱の中に入っていたのは、薄桃色の可憐なドレスだった。

 細かなフリルと繊細な花の飾りが、優雅さと上品さをかもし出している。派手すぎず露出も控えめで、私の好みの服だった。