「とにかく、俺の執着心をなめるな。俺に秘密を教えたのが運の尽きだな。悪いが、もう逃がす気はない。諦めろ」

「『愛してほしいなんて思ってない』って、さっき言ってたんじゃないの?」

 ちょっとイジワルに言うと、シリウスがニヤリと笑った。

「俺は『いますぐ』愛してほしいなんて思ってない、と言ったんだ。これからじっくり惚れさせる」

「何よそれ、すごい屁理屈じゃないの」

「屁理屈じゃない、駆け引きだ」

「ふぅん? あの口下手なシリィが駆け引きを覚えるなんて。随分大人になったのね」

 からかい混じりに言うと、シリウスは目を細めて「大人の男を、あんな無防備に寝室へ通すなよ」と意地悪く返してくる。私は、ううっと言葉に詰まった。

 昔は、しゃべりは私の方が上手だったのに。いつの間にか、形勢逆転されてる。

 勝てる気がしない……と恨めしげに睨む私を、シリウスが余裕の表情で眺めていた。

 ふと疑問が浮かび、私は口を開く。

「そういえば……。王室の記録では、子どもの頃は離宮にいたはずよね? どうしてシリィとして孤児院にいたの?」