【コミカライズ配信中・書籍化決定】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

「あなたの死を回避できただけで、私はもう十分満足してるの。それにあなただって今が一番大事な時期でしょう? お願い、危険なことはしないで」

「大丈夫だ。殺しはしない。――楽に終わらせてたまるか」

「怖いわよ!」

 せっかく死を回避したのに、また危険にさらしたくない。

 私は彼の気をそらすべく、わざと話題を変えた。
 
「実は、不安だったの。私、こんな複雑な事情があるから。全部知ったら、あなたが私のこと嫌いになるんじゃないかって」

「それで俺を避けていたのか?」

「複雑な事情に巻き込みたくないって理由も勿論あるわよ。でも……うん、そうね。私、怖かったのかも」

 視線を落として、私は胸の内を語った。
 
「力を失った途端、みんな……実の親すら、私のもとから去っていったわ。だからあなたも私の事情を知ったら、きっと」

「厄介者扱いして嫌いになると? ――君は、全然分かってないな」