【コミカライズ配信中・書籍化決定】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

 もうこれ以上、我慢なんて出来ない。
 こんなにも私を想ってくれている人に、嘘なんてつけない。

「ごめん……ごめんね。シリィ」

 シリウスが勢いよく顔を上げる。大きく見開いた青い目と、視線が交わる。

「私もあなたが、ずっと」

 好きの二文字とキス、どちらが早かったのか。
 
 言葉を奪うように重ねられた口づけに応えて、私は目を閉じ、シリウスの背中に手をまわした。立っていられなくて、唇を合せたまましゃがみこむ。

 どれほどキスをして、抱きしめ合っていたのだろう。

 時を告げる鐘の音が鳴り、私たちは我に返った。

 互いに気恥ずかしくて、視線をそらす。チラッと横目で見ると、シリウスも同じように流し目を送ってきて、二人でくすくす笑ってしまった。
 
 なんだか子供時代に戻ったかのような。甘酸っぱくて、くすぐったい気持ちがこみあげる。
 
 ひとしきり笑ったあと、シリウスが話を切り出した。

「事情を聞かせて欲しい。エスターがアデルになった過去と理由を」