寝かしつけるように頭を撫でられて、私は嫌々と首を振る。まだ寝たくなかった。もう少し、この幸せな夢に浸っていたい。
 
「そばに、いて」

 辛うじてそう告げると、彼は驚いた顔をした。ついで眉間にしわをよせ、何かを我慢するような険しい顔つきになる。

 
「君は魔性の女性だな。突き放したかと思えば、こんな可愛い姿を……。俺の理性を試しているのか? アデル」

 言っていることが、良く分からない。

 とりあえず「わたしのこと、嫌い……?」と尋ねると、シリウスはますます苦しげな顔になって胸を押えた。

「……嫌いになど、なるものか。好きすぎて……君と少しでも話がしてくて、このような真似までしてしまった」

 その言葉に、ほっとする。同時に涙がこぼれた。

 それを見たシリウスが、大きく目を見開く。
 
「……よかった」

 震える涙声で告げた瞬間、きつく抱きしめられた。

 
「好きだ。アデル――」

 
 切実な告白に、呼吸がとまる。

 いつも冷静なシリウスには珍しい、むき出しの感情をぶつけるような、切羽詰まった声だった。