ミーティアは『お姉様ばっかりずるい』と言うけれど、私だって何もかも神様から与えられた訳じゃない。

 教養、勉学、淑女の礼儀作法、言葉遣い、仕草、周囲からの評価、これらは全部、私自身の努力で得たもの。


 私からすれば、駄々をこねるだけで、異能と両親の愛、婚約者を一気に手に入れたミーティアの方がずるいと思う。

 
(……なんて、恨みがましいことを考えても仕方ないわね。気分転換に、散歩でもしましょう)
 
 部屋を出て庭を歩いていると、テラスから笑い声が聞こえてきて、私は眉をひそめた。

 
「ミーティアはまるで花のように愛らしいね」

「ダニエルったら、お世辞がお上手ですわね」

「お世辞じゃない、俺は本気さ」

「嬉しい! あのね、わたくしね、ずっと前からあなたのことが好きだったの。ふふっ、恥ずかしいわ」

「ああ、君はなんて可愛らしいんだ!」

 肩を抱き寄せられ、ミーティアがダニエルの胸に頬ずりする。
 
 目の前の光景に、耳に残る二人の甘ったるい声に、強烈な吐き気が込み上げた。

 
(……部屋に戻りましょう)
 
 
 立ち去ろうとした瞬間、運悪くミーティアと目が合ってしまった。