人々がシリウスに期待を寄せているのは一目瞭然。

 シリウス派の貴族らは誇らしげに胸を張り、メイナード派閥の者たちは、不甲斐ない主君に呆れと失望の眼差しを向けている。

 第一王子と聖女に表だって味方する者は、もはや誰もいないようだった。


 ――未来(シナリオ)が、変わった。


 いまだに信じられない。
 
 シリウスが生きている。さらには、王になって国を変えるという、夢への第一歩を踏み出している。

 目の前の現実がひたすら嬉しくて、私はその場で静かに涙を流した。

 ふいにシリウスが周囲を見わたして、ぴたりと私を捉える。
 
 
 視線が噛み合った瞬間、彼はかすかにほほ笑んだ。その不器用な笑い方が記憶にあるシリィと同じで、さらに涙がこぼれる。

 
(シリウス殿下……シリィ、幸せになってね)