これ以上、見ていられない。
 私はこらえきれず、両手で顔を覆ってうつむいた。
 
 
(変えられなかった……。何も、変えられなかった……っ)
 
 
 じわりと涙がこみあげる。絶望に打ちひしがれ、嗚咽をかみ殺していた、その時――。

 

「これより裁判を開始する。被告人カルロス・ウォルス伯爵、前へ」
 
 聞き慣れぬ被告人の名前に、私ははっと顔を上げた。
 
 
(シリウス殿下じゃ、ない……?)