目を閉じれば、数日前の光景が鮮明に思い出せる。

 満点の星空の下、アデルは瞳を流星のごとく輝かせ、俺にこう言った。

 
――『殿下の夢はとても素敵です。私は、あなたが生きて切り開く未来を、見てみたい』と。

 
 俺の思い描く夢を、未来を、否定せず『見てみたい』と言ってくれた女性は、アデルが初めてだった。

 あの瞬間、これから先も、自分の隣に彼女がいて欲しいと強く願った。ともに未来を思い描き、歩みたいと――。

「話をまとめると――」とライアンが言った。

「つまり殿下は、エスター嬢にずっと恋していたけど、最近はアデル嬢が気になる、ということですよね。それで? なんでそんなに思い詰めてるんです?」

「俺は、アデルにエスターの面影を重ねているのかもしれない。好きだった人を失った喪失感を、他の女性で埋めようとするなど……自分の弱さと不誠実さが(いと)わしい」

「はぁ、あなたは本当に生真面目というか、不器用というか」ライアンが両手を頭の後ろで組み、呆れた顔で呟く。

 しばらく天井を見つめ考え込んだあと、年上の従者は珍しく真面目な顔で言った。