「これは、俺の友人の話なのだが」

「友人? 殿下って、オレ以外に友達いましたっけ?」

「…………」

「へいへい。それで? その友人がどうしたんです」

「実は、その友人は最近、長らく想っていた女性を亡くしたのだが――」

「エスター嬢のことですよね?」

「…………」

 無言で睨み付けると、ライアンは口をひき結び、両手を挙げて降参のポーズを取った。しゃべらないから続きをどうぞ、と目で先を促してくる。

 
「俺は……いや、俺の友人は、今も亡き彼女を想っている。……のだが、最近、彼女の親友だった女性に、惹かれてしまっている」

 最初は、エスターの死について聞くため彼女――アデルに近付いた。

 墓地で出会った彼女は明らかに俺のことを警戒しており、何か知っているような気がした。その後、教会で顔を合せるようになり、俺はひっそり彼女のことを観察していた。

 そう、俺にとってアデル・シレーネという女性は、観察対象だったのだ。

 なのに気付けば、彼女に強く惹かれていた。