「墓地で会った時、君は俺のことをかなり警戒していたな。それに、カルミア侯爵に対しても冷たい態度をとっていただろう? だから君は、男性が苦手なのかと思っていた」

 だが違った、と殿下は続けた。

「ともに過ごすうちに、君が優しくて面倒見のよい、心の温かな女性なのだと知った。それに、くるくる表情が変わるのも、見ていてほほ笑ましい。無口な俺を楽しませようと、必死に話題を探す姿も愛らしかった」

 ほほ笑ましいとか、愛らしいとか、言われなれない単語のオンパレードに、私は完全に思考停止。何て返せば良いか分からず、シリウスの顔を見上げたまま途方にくれてしまう。

 
「そういうアデルの意外な一面に、俺は好感を持っている。だから放っておけない。――これで、答えになっただろうか?」

 殿下の問いに、私はこくりと頷く。
 

 
 そうこう話しているうちに、私は騎士団内にある医務室へ運ばれた。
 
 医師によると、私は軽い貧血らしい。

「一晩様子を見た方がいい」という医師の助言に従い、医務室に泊まろうとする私を、シリウスが押しとどめた。