「さぁ、ミーティア。おいで」
 
 メイナードは甘やかな顔にさらに甘ったるい笑みを浮かべ、ミーティアを膝に乗せた。焼き菓子を摘まみ、婚約者の口にうやうやしく運ぶ。

 いわゆる、あーん状態。

(小説で読む分にはいいけど、生で見るイチャラブ溺愛はきっついわ!)

 あまりの猛愛っぷりに胸焼けがする。
 
 聖女を膝に乗せたメイナードの元に、廷臣がやってきて何か耳打ちした。メイナードは煩わしいといった様子で追い払う。

 さっきから、五回以上はこのやり取りを繰り返していた。

「はぁ、うるさい奴らだ。やれ会議に出ろだの、書類仕事が溜まっているだの。この僕を誰だと思っているのか」

「まぁ! 不敬な家臣たちですわね!」
 
 
 部屋の外が騒がしくなり、応接間の扉が開いた。

 外の空気をともなって現れたのは、公務用の礼服を身にまとったシリウスだった。