「ミーティア様! この平民を私たちの仲間にいれるのですか!」

 立ち上がり抗議をあげたのは、先ほど不倫がばれた伯爵令嬢だった。

 ミーティアはゆっくりと彼女を見上げると、目をぱちくりさせて首をかしげる。

「あら? あなた、どなたでしたかしら?」

 使えない(ともだち)を、忘却の彼方に切り捨てた。

 
 青ざめ呆然とする伯爵令嬢を、侍女達がやんわり立ち上がらせ、部屋から追い出しにかかる。

「許さない! 許さないんだから! あんたは、聖女じゃなくて悪魔よ――ッ!」
 
 
 伯爵令嬢が叫んだあと扉が閉まり、辺りは静かになった。

 
「さぁ、お茶会の続きをいたしましょう」
 
 
 ミーティアの一声で、令嬢たちが表向き何事もなかったかのように話し始める。しかし全員、顔はひきつり指先が細かく震えていた。

 聖女にとって使えない『お友達』は、即刻追放される。
 真綿で首を絞められるような恐怖が、部屋中に充満していた。

 私は無邪気にはしゃぐミーティアを見る。

(今のうちに、幸せなシナリオを謳歌しておきなさい)

 清らかな聖女の笑みで罪を隠す妹と、背後に刃を握りしめ笑顔で忍びよる(わたし)
 
 互いに仮面で本性を隠した姉妹は、この日から友人になった。