万が一、シナリオどおりに反乱が起きた場合に備えて、被害を最小限にする策も講じなければ。

(廃兵庫が襲われたとしても、火薬と弾薬がなければ、武器は鉄の塊も同然。各商会の火薬倉庫も死守しなきゃ。――お父様に頼みましょう)
 
 私は書斎へ向かった。

 父に『危険物のある倉庫を厳重警備するよう、各商会に至急通達して欲しい』と頼むと、すぐさま了承が得られた。

 
(ひとまず、出来る限りの手は尽くしたわね)

 椅子の背もたれに身を預け、ふぅとため息をつく。しばらくして部屋に侍女がやってきた。
 
「お嬢様、王宮から招待状が届きました」

「招待状?」

 差出人は――ミーティア・ロザノワール伯爵令嬢。

 内容は、明日、聖女離宮で開催されるお茶会への誘いだった。

(いよいよ『アデル』として対面する時ね。気を引き締めなきゃ――)