そこからはなんかもう、トントン拍子で異様なほどにテンポが良かった。
[木之本の妹]
「お姉ちゃん誰〜?」
[木之本の弟]
「夏樹お兄ちゃんの彼女〜?」
[朝蔵 大空]
「彼女じゃないです」
めっ…………ちゃくちゃいる、子供が。
[木之本 夏樹]
「う、うち兄弟多いんだよ! んで、俺が1番上の長男なんだ」
[朝蔵 大空]
「へぇ」
[木之本の弟]
「ねぇ! お姉ちゃんと夏樹お兄ちゃんが結婚したら、僕達叔父さん叔母さんになっちゃうね!」
[木之本の妹]
「なっちゃうね!!」
!?
子供だからそう言うのも、今の時代だとセクハラって分からないよね……。
[木之本の母]
「うちのバカ息子を、よろしくお願いします」
[木之本の父]
「よっしゃ、孫だ〜〜!!!」
木之本くんのご両親にも何故か気に入られて、いつの間にか付き合ってることにされてしまっていた。
私も否定すれば良いものを、既にそんなことを言える空気じゃなくなっていた。
[木之本 夏樹]
「1ヶ月記念おめでとう、そしてありがとう!」
[朝蔵 大空]
「ありがとう」
私達は今、夜景が見える高級レストランで食事をしている。
[木之本 夏樹]
「お、おお、俺と! 結婚して下さい!!」
そう言って木之本くんは、私に指輪と花束を差し出して来る。
[エキストラA]
「おお、プロポーズ!」
[エキストラB]
「あら、素敵〜♡」
展開、早っ。
カンカン♪ カンカン♪ カンカン♪
チャペルの音が鳴り響く、え……私もしかして、《《結婚》》しちゃった??
[朝蔵 大空]
「……」
私の体は、純白のドレスに身を包まれている、そして手には豪華な花束。
[知らない人A]
「きゃ〜、素敵よ〜」
[知らない人B]
「幸せになれよー!!」
[知らない人C]
「花嫁さんもっと笑顔ちょうだーい!」
目の前には、たくさんの私の知らない人達……恐らく、木之本くんの友達か親戚の人達だと思う。
[木之本 夏樹]
「みんなありがとーー!! 俺達、幸せになりまーーす!!!!」
[朝蔵 大空]
「幸せになる…………」
私は、隣にいる木之本くんには聞こえないように、小声でそう呟く。
……あれ、でも良いんだっけ?
心身共に健康な夫と、たくさんの人に祝われる結婚。
明るく裕福な義実家とご両親、安泰を約束された楽勝人生。
女にとって、最高に幸せな状態……でも。
こんな、私だけが幸せになる終わり方で良いんだっけ??
[十七男]
「ぼく、じゅうしちなん!」
[三十三女]
「わたし、さんじゅうさんじょ!」
多い、多い、あまりにも多すぎる。
この子達、みんな私の子供なの……?
──そしてふたりは、子宝に恵まれていつまでも幸せに暮らしましたとさ。
【悲恋の大空】……おしまい。
……。
[朝蔵 大空]
「って……おかしいでしょ!!」
パチッ!!
私は、自身の頬を思い切り叩く。
[???]
『へぇ、考えうる限り至高のハッピーエンドだったのに』
……。
[朝蔵 大空]
「痛っ」
自分で叩いたはいいけど、ほっぺがジンジンと傷んでつらい。
[朝蔵 大空]
「わ、私は今まで何して……?」
[アリリオ]
「おはよう、お姫様!」
[朝蔵 大空]
「へ? アリリオくん? え、なんで私アリリオくんに膝枕されてるの?!」
目覚めると私は、アリリオくんの膝の上で寝ていた。
[アリリオ]
「君、凄いね! やっぱり、君を選んで良かった! 君は、想像以上のポテンシャルの持ち主だよ!」
[朝蔵 大空]
「な、なんの話ですか?」
[加藤 右宏]
「茶番は終わりダ」
[アリリオ]
「終わり?」
私そっちのけで、ミギヒロとアリリオくんが話している。
[加藤 右宏]
「アリリオ、見してやレ」
[アリリオ]
「はーい」
[朝蔵 大空]
「……?」
アリリオくんが懐からタブレットような物を取り出し、明るくなった画面を私に見せてくる。
[アリリオ]
「見えるかな?」
そこに写し出されていたのは、複数の人間が身を寄せ合いながら、気絶しているように見える映像だった。
[嫉束 界魔]
『…………』
[不尾丸 論]
『…………』
[花澤 岬]
『…………』
最初は何かの映画のワンシーンかと思った、だけどそこに写っているのは、私がよく知っている人達で。
[朝蔵 大空]
「これは! 嫉束くん達に、不尾丸くん達……先輩達まで!?」
これは、生きているの? 死んでいるの?
[アリリオ]
「大丈夫、眠っているだけさ。 怪我してるわけじゃないから、安心して」
[朝蔵 大空]
「どう言うこと……この場所はどこ?」
何故、私の大切な学友達はこんな冷たく暗い、見知らぬ場所で幽閉されているのだろうか。
[加藤 右宏]
「お前の友達は預かっタ、返しテほしければオレ達の言うことを聞ケ」
[アリリオ]
「そう言うこと」
[朝蔵 大空]
「こんなの酷い、一体何が目的なの? 世界征服!?」
[アリリオ]
「違う違う、ぼくらは世界をより良くしたいだけだよ〜」
世界をより良く、ですって?
[朝蔵 大空]
「訳が分からない。 どうして私の友達が、こんな目に遭わないといけないの?」
[アリリオ]
「残念! どれだけ抗っても君はぼく達に従うしか、無いのさ」
[加藤 右宏]
「大空、ココへ来て」
ミギヒロが両手を広げて、私を迎え入れるようなポーズをとる。
[朝蔵 大空]
「嫌だ! また私を騙して遊んでるんでしょ?! さっきの映像だって、きっと今流行りのAIフェイク動画よ! ママに言いつけてやるんだから!!」
[アリリオ]
「おやおや……」
[加藤 右宏]
「オイ! 離れていくナ!!」
私は反対を向いて、遠くへ走っていく。
私は今、どこに向おうとしているんだろう?
[朝蔵 大空]
「え……」
私の体が、段々と薄く透明になっていく、感覚もやがてぼやけていき、フラッとその場に倒れてしまった。
[朝蔵 大空]
「どう言うことなの……」
[アリリオ]
「あのね。 君は今、ほとんど死んでる状態なんだ」
[朝蔵 大空]
「はっ?」
気付くとアリリオくんが、道に横になっている私の隣に立っていた。
[朝蔵 大空]
「体が……元に戻った?」
体の感覚が戻った私は、とりあえず体を起こす。
[アリリオ]
「これを見て!」
見ると……ぽわぽわとした何かが、アリリオくんの手に握られている。
青く優しく光る、温かみのある炎の玉がそこにあった。
[朝蔵 大空]
「それは……?」
[アリリオ]
「これはね、君の魂!」
[朝蔵 大空]
「えっ!!? 私の!? よく分かんないけど、返してよ!!」
私は、自分の魂だと言われるものに、無我夢中で手を伸ばす。
[アリリオ]
「ダメダメダメ、返すわけないじゃん! ねっ、王子!」
[加藤 右宏]
「そうダ」
[アリリオ]
「分かったかな? 君の魂がここにある内は、君に自由は無いし、どこにも行けないの!」
[朝蔵 大空]
「は……」
私は、恐怖心で泣き出してしまう。
[アリリオ]
「泣いてるの? でも、最初君が望んだことでもあるよね? 人として生きること全部捨てて、《《あの世》》で例のお兄さんと永遠に眠るつもりだったんでしょ?」
えっ。
[加藤 右宏]
「ソノ辺にしとけ、明日また話そう」
[朝蔵 大空]
「……」
[加藤 右宏]
「大空、立てるカ?」
ミギヒロが、私の肩に触れてくる。
その手を私は、ぱしっと叩いてミギヒロを睨みつける。
[加藤 右宏]
「!?」
[朝蔵 大空]
「そうだよ。 こうなったのも全部、ミギヒロが悪い!! 私はもう、生きるのも死ぬのも怖いの! なんで私に、生きる楽しさを教えたの?! 私にはあの人さえいれば、よかったはずなのに!!」
[アリリオ]
「あ、キレた」
[朝蔵 大空]
「こんな思いするなら、どうせ失うなら、つまらない人生のままでよかったよ! そしたら、なんの未練も無く死ぬことが出来たのに!!」
[加藤 右宏]
「大空、泣かなイで……」
人が悲しくなるのはきっと、幸せを知っているからだと思う。
[アリリオ]
「んーっと……そろそろ、《《お迎え》》が来る頃だね」
[加藤 右宏]
「……?」
──その時。
[悪魔?]
「見つけましたぞ王子!」
[加藤 右宏]
「ゲッ……」
[アリリオ]
「ニヤリ」
月下に複数の黒影が並ぶ、それらは明らかにこの世の者達ではなかった。
[加藤 右宏]
「クソっ! アリリオ!! 大空を連れて逃げるゾ!!」
[アリリオ]
「やなこった!」
アリリオは、ミギヒロの命令に背く。
[加藤 右宏]
「な……お前まさカ」
[悪魔]
「さぁ、我々と共に魔界へ戻りましょう!!」
[加藤 右宏]
「は、離せ!!」
ミギヒロは悪魔達に捕えられ、じたばたする。
[加藤 右宏]
「裏切ったな、アリリオ!」
[アリリオ]
「ありがとう王子、これでぼくらの野望が叶えられそうだよ」
[悪魔]
「開け! 魔界への扉よ!!」
紫色のイナズマが飛び散るブラックホールに、ミギヒロが吸い込まれていく。
[加藤 右宏]
「大空ー!!」
ミギヒロが、私の名前を叫んで手を伸ばす。
[朝蔵 大空]
「ミギヒロ!?」
数秒後にブラックホールは消え、静かな夜道へとかえる。
[朝蔵 大空]
「……ミギヒロ?」
[アリリオ]
「さぁ! 邪魔者はみーんないなくなったね!」
[朝蔵 大空]
「!?」
[アリリオ]
「大体さぁ、王子も奥手過ぎるんだよ〜。 さっさと、食べちゃえばいいのにっ」
[朝蔵 大空]
「な、なんの話?!」
食べる……?
[アリリオ]
「ほんじゃ、いただきまーす……ぱくっ」
先ほどの青い火の玉、つまりは私の魂が躊躇い無くアリリオくんの口の中へ……。
[朝蔵 大空]
「あーーー!!?」
[アリリオ]
「モグモグ……」
た、た、食べられちゃった、私の魂……。
[朝蔵 大空]
「……」
[アリリオ]
「えーっと……うん、完全に一体化するには一晩寝かせる必要があるんだよね〜。 てなわけで、ほいっ!」
そう言ってアリリオくんは、私を抱きかかえたまま空高く飛んで行く。
[朝蔵 大空]
「ちょっと!」
[アリリオ]
「ぼくは紳士なので、姫をお家まで送っていきますっ!」
あっという間に私は家まで送り届けられ、窓から私の部屋に侵入され、ベッドへと寝かされる。
[アリリオ]
「はいっ、高速パジャマ早着替え〜♪ シュバババ!」
[朝蔵 大空]
「わわわ!」
目にも止まらぬ速さで、パジャマに着替えさせられた!!
[アリリオ]
「ふふ、今夜はお疲れ様……ゆっくりおやすみ、ぼくのお姫様」
額にキスを落とされる、そして私の意識もそこで落ちる……。
……。
[???]
『ソ……様』
……ん?
[???]
『ソラ様……』
誰かが私の名前を呼んでいる。
[如月 凛]
「おやすみのところ、すみません……」
[朝蔵 大空]
「リンさん!?」
[如月 凛]
「シー……静かにっ」
[朝蔵 大空]
「はっ、ごめんなさい?」
目を開けると、目の前にリンさんが立っていた。
[如月 凛]
「あの悪魔は、少し前に部屋を出て西の方角へと飛んで行きました」
[朝蔵 大空]
「リンさん大変なんです、アリリオくんに私の魂? を、食べられて……」
[如月 凛]
「まったく破廉恥です」
[朝蔵 大空]
「何が!?」
私はされたことを、そのまま説明したまでで……。
[如月 凛]
「ソラ様、私は貴女にあーしろだとか、こーしなさいとは言えません。 だけど、これだけは預けておきたかったのです」
[朝蔵 大空]
「これは……?」
リンさんから渡されたものは、水晶のような石が付いたチャームだった。
[如月 凛]
「御守りのようなものです、気休めにしかならないと思いますが……」
[朝蔵 大空]
「ありがとうございます……あの、ミギヒロ達は……アリリオくんは、何を企んでいると思いますか?」
[如月 凛]
「私にも分からないんです。 アリリオ様とミギヒロ様の目的は、一緒ではなかった……今はそれしか」
[朝蔵 大空]
「と、友達が誘拐されたんです! 助けて下さい!!」
[如月 凛]
「ソラ様、はっきり申し上げます。 彼らを救うことが出来るのは、ソラ様……貴女にしか出来ません!」
私にしか、出来ない?
[朝蔵 大空]
「そんな……助けてくれないんですか?」
[如月 凛]
「すみません。 私にこれ以上の干渉は許されません、私は天使なので」
[朝蔵 大空]
「私はどうすれば……」
[如月 凛]
「あの悪魔が戻って来る前に、私は行きます……では」
リンさんは私に背中を向け、白い光の中へと消えて行った。
……。
[アリリオ]
「やぁ、マイプリンセス! よく眠れたかな〜?」
[朝蔵 大空]
「……」
朝が来た。
[アリリオ]
「さぁ今日からまた、朝蔵大空のつまらなくない人生の、新たな1ページが始まるよ〜!」
[朝蔵 大空]
「ねぇ、アリリオくん」
[アリリオ]
「なになに〜、どうしたの姫〜?」
私は、今最大に気になっていることがあった。
[朝蔵 大空]
「卯月くんはどこ?」
[アリリオ]
「……」
私がそう尋ねると、陽気そうだったアリリオくんの表情が、一変して不機嫌そうになった。
[アリリオ]
「はぁ、まだあんな奴のことなんて気にしてるんだ?」
[朝蔵 大空]
「卯月くんのことも、アリリオくんが誘拐したの?」
[アリリオ]
「あーあ健気なこった、あんなことされたって言うのに」
……あんなこと?
[アリリオ]
「あ、そっかそっか。 痛みも感じないほどにスパッと首切られちゃったもんね〜」
[朝蔵 大空]
「首? ……!!?」
鏡を見ると、私の首に確かに横一線傷跡のようなものが刻まれていた。
何これ……?
[朝蔵 大空]
「卯月くん……」
今でも思い出せる、彼との大切な日々。
──『朝蔵さん』
優しい声で私を呼んでくれる彼、貴方はこんな私に無償の愛を与えてくれた。
だけどその愛を一度、自ら手放さそうした。
これは、そんな私への罰だ。
ぽたぽたと私の頬から、涙が流れる。
[朝蔵 大空]
「みんなに、会いたいよ……」
貴方のいない世界は、本当に退屈だ。
「また会える日まで」おわり……。
第3傷「新緑」 〜完〜
以上、13話(26部分)を以ちまして『悲恋の大空』の3章を終了させて頂きます。
最後に、ここまで読んで下さった優しい読者様にお願いがあります。
この小説に作品フォロー、評価☆☆☆、応援♡、コメントなどをしてもらえると作者は大変喜び、今後の執筆の励みにもなります。
頑張りますのでどうかこれからも、『悲恋の大空』をよろしくお願い致します!
[木之本の妹]
「お姉ちゃん誰〜?」
[木之本の弟]
「夏樹お兄ちゃんの彼女〜?」
[朝蔵 大空]
「彼女じゃないです」
めっ…………ちゃくちゃいる、子供が。
[木之本 夏樹]
「う、うち兄弟多いんだよ! んで、俺が1番上の長男なんだ」
[朝蔵 大空]
「へぇ」
[木之本の弟]
「ねぇ! お姉ちゃんと夏樹お兄ちゃんが結婚したら、僕達叔父さん叔母さんになっちゃうね!」
[木之本の妹]
「なっちゃうね!!」
!?
子供だからそう言うのも、今の時代だとセクハラって分からないよね……。
[木之本の母]
「うちのバカ息子を、よろしくお願いします」
[木之本の父]
「よっしゃ、孫だ〜〜!!!」
木之本くんのご両親にも何故か気に入られて、いつの間にか付き合ってることにされてしまっていた。
私も否定すれば良いものを、既にそんなことを言える空気じゃなくなっていた。
[木之本 夏樹]
「1ヶ月記念おめでとう、そしてありがとう!」
[朝蔵 大空]
「ありがとう」
私達は今、夜景が見える高級レストランで食事をしている。
[木之本 夏樹]
「お、おお、俺と! 結婚して下さい!!」
そう言って木之本くんは、私に指輪と花束を差し出して来る。
[エキストラA]
「おお、プロポーズ!」
[エキストラB]
「あら、素敵〜♡」
展開、早っ。
カンカン♪ カンカン♪ カンカン♪
チャペルの音が鳴り響く、え……私もしかして、《《結婚》》しちゃった??
[朝蔵 大空]
「……」
私の体は、純白のドレスに身を包まれている、そして手には豪華な花束。
[知らない人A]
「きゃ〜、素敵よ〜」
[知らない人B]
「幸せになれよー!!」
[知らない人C]
「花嫁さんもっと笑顔ちょうだーい!」
目の前には、たくさんの私の知らない人達……恐らく、木之本くんの友達か親戚の人達だと思う。
[木之本 夏樹]
「みんなありがとーー!! 俺達、幸せになりまーーす!!!!」
[朝蔵 大空]
「幸せになる…………」
私は、隣にいる木之本くんには聞こえないように、小声でそう呟く。
……あれ、でも良いんだっけ?
心身共に健康な夫と、たくさんの人に祝われる結婚。
明るく裕福な義実家とご両親、安泰を約束された楽勝人生。
女にとって、最高に幸せな状態……でも。
こんな、私だけが幸せになる終わり方で良いんだっけ??
[十七男]
「ぼく、じゅうしちなん!」
[三十三女]
「わたし、さんじゅうさんじょ!」
多い、多い、あまりにも多すぎる。
この子達、みんな私の子供なの……?
──そしてふたりは、子宝に恵まれていつまでも幸せに暮らしましたとさ。
【悲恋の大空】……おしまい。
……。
[朝蔵 大空]
「って……おかしいでしょ!!」
パチッ!!
私は、自身の頬を思い切り叩く。
[???]
『へぇ、考えうる限り至高のハッピーエンドだったのに』
……。
[朝蔵 大空]
「痛っ」
自分で叩いたはいいけど、ほっぺがジンジンと傷んでつらい。
[朝蔵 大空]
「わ、私は今まで何して……?」
[アリリオ]
「おはよう、お姫様!」
[朝蔵 大空]
「へ? アリリオくん? え、なんで私アリリオくんに膝枕されてるの?!」
目覚めると私は、アリリオくんの膝の上で寝ていた。
[アリリオ]
「君、凄いね! やっぱり、君を選んで良かった! 君は、想像以上のポテンシャルの持ち主だよ!」
[朝蔵 大空]
「な、なんの話ですか?」
[加藤 右宏]
「茶番は終わりダ」
[アリリオ]
「終わり?」
私そっちのけで、ミギヒロとアリリオくんが話している。
[加藤 右宏]
「アリリオ、見してやレ」
[アリリオ]
「はーい」
[朝蔵 大空]
「……?」
アリリオくんが懐からタブレットような物を取り出し、明るくなった画面を私に見せてくる。
[アリリオ]
「見えるかな?」
そこに写し出されていたのは、複数の人間が身を寄せ合いながら、気絶しているように見える映像だった。
[嫉束 界魔]
『…………』
[不尾丸 論]
『…………』
[花澤 岬]
『…………』
最初は何かの映画のワンシーンかと思った、だけどそこに写っているのは、私がよく知っている人達で。
[朝蔵 大空]
「これは! 嫉束くん達に、不尾丸くん達……先輩達まで!?」
これは、生きているの? 死んでいるの?
[アリリオ]
「大丈夫、眠っているだけさ。 怪我してるわけじゃないから、安心して」
[朝蔵 大空]
「どう言うこと……この場所はどこ?」
何故、私の大切な学友達はこんな冷たく暗い、見知らぬ場所で幽閉されているのだろうか。
[加藤 右宏]
「お前の友達は預かっタ、返しテほしければオレ達の言うことを聞ケ」
[アリリオ]
「そう言うこと」
[朝蔵 大空]
「こんなの酷い、一体何が目的なの? 世界征服!?」
[アリリオ]
「違う違う、ぼくらは世界をより良くしたいだけだよ〜」
世界をより良く、ですって?
[朝蔵 大空]
「訳が分からない。 どうして私の友達が、こんな目に遭わないといけないの?」
[アリリオ]
「残念! どれだけ抗っても君はぼく達に従うしか、無いのさ」
[加藤 右宏]
「大空、ココへ来て」
ミギヒロが両手を広げて、私を迎え入れるようなポーズをとる。
[朝蔵 大空]
「嫌だ! また私を騙して遊んでるんでしょ?! さっきの映像だって、きっと今流行りのAIフェイク動画よ! ママに言いつけてやるんだから!!」
[アリリオ]
「おやおや……」
[加藤 右宏]
「オイ! 離れていくナ!!」
私は反対を向いて、遠くへ走っていく。
私は今、どこに向おうとしているんだろう?
[朝蔵 大空]
「え……」
私の体が、段々と薄く透明になっていく、感覚もやがてぼやけていき、フラッとその場に倒れてしまった。
[朝蔵 大空]
「どう言うことなの……」
[アリリオ]
「あのね。 君は今、ほとんど死んでる状態なんだ」
[朝蔵 大空]
「はっ?」
気付くとアリリオくんが、道に横になっている私の隣に立っていた。
[朝蔵 大空]
「体が……元に戻った?」
体の感覚が戻った私は、とりあえず体を起こす。
[アリリオ]
「これを見て!」
見ると……ぽわぽわとした何かが、アリリオくんの手に握られている。
青く優しく光る、温かみのある炎の玉がそこにあった。
[朝蔵 大空]
「それは……?」
[アリリオ]
「これはね、君の魂!」
[朝蔵 大空]
「えっ!!? 私の!? よく分かんないけど、返してよ!!」
私は、自分の魂だと言われるものに、無我夢中で手を伸ばす。
[アリリオ]
「ダメダメダメ、返すわけないじゃん! ねっ、王子!」
[加藤 右宏]
「そうダ」
[アリリオ]
「分かったかな? 君の魂がここにある内は、君に自由は無いし、どこにも行けないの!」
[朝蔵 大空]
「は……」
私は、恐怖心で泣き出してしまう。
[アリリオ]
「泣いてるの? でも、最初君が望んだことでもあるよね? 人として生きること全部捨てて、《《あの世》》で例のお兄さんと永遠に眠るつもりだったんでしょ?」
えっ。
[加藤 右宏]
「ソノ辺にしとけ、明日また話そう」
[朝蔵 大空]
「……」
[加藤 右宏]
「大空、立てるカ?」
ミギヒロが、私の肩に触れてくる。
その手を私は、ぱしっと叩いてミギヒロを睨みつける。
[加藤 右宏]
「!?」
[朝蔵 大空]
「そうだよ。 こうなったのも全部、ミギヒロが悪い!! 私はもう、生きるのも死ぬのも怖いの! なんで私に、生きる楽しさを教えたの?! 私にはあの人さえいれば、よかったはずなのに!!」
[アリリオ]
「あ、キレた」
[朝蔵 大空]
「こんな思いするなら、どうせ失うなら、つまらない人生のままでよかったよ! そしたら、なんの未練も無く死ぬことが出来たのに!!」
[加藤 右宏]
「大空、泣かなイで……」
人が悲しくなるのはきっと、幸せを知っているからだと思う。
[アリリオ]
「んーっと……そろそろ、《《お迎え》》が来る頃だね」
[加藤 右宏]
「……?」
──その時。
[悪魔?]
「見つけましたぞ王子!」
[加藤 右宏]
「ゲッ……」
[アリリオ]
「ニヤリ」
月下に複数の黒影が並ぶ、それらは明らかにこの世の者達ではなかった。
[加藤 右宏]
「クソっ! アリリオ!! 大空を連れて逃げるゾ!!」
[アリリオ]
「やなこった!」
アリリオは、ミギヒロの命令に背く。
[加藤 右宏]
「な……お前まさカ」
[悪魔]
「さぁ、我々と共に魔界へ戻りましょう!!」
[加藤 右宏]
「は、離せ!!」
ミギヒロは悪魔達に捕えられ、じたばたする。
[加藤 右宏]
「裏切ったな、アリリオ!」
[アリリオ]
「ありがとう王子、これでぼくらの野望が叶えられそうだよ」
[悪魔]
「開け! 魔界への扉よ!!」
紫色のイナズマが飛び散るブラックホールに、ミギヒロが吸い込まれていく。
[加藤 右宏]
「大空ー!!」
ミギヒロが、私の名前を叫んで手を伸ばす。
[朝蔵 大空]
「ミギヒロ!?」
数秒後にブラックホールは消え、静かな夜道へとかえる。
[朝蔵 大空]
「……ミギヒロ?」
[アリリオ]
「さぁ! 邪魔者はみーんないなくなったね!」
[朝蔵 大空]
「!?」
[アリリオ]
「大体さぁ、王子も奥手過ぎるんだよ〜。 さっさと、食べちゃえばいいのにっ」
[朝蔵 大空]
「な、なんの話?!」
食べる……?
[アリリオ]
「ほんじゃ、いただきまーす……ぱくっ」
先ほどの青い火の玉、つまりは私の魂が躊躇い無くアリリオくんの口の中へ……。
[朝蔵 大空]
「あーーー!!?」
[アリリオ]
「モグモグ……」
た、た、食べられちゃった、私の魂……。
[朝蔵 大空]
「……」
[アリリオ]
「えーっと……うん、完全に一体化するには一晩寝かせる必要があるんだよね〜。 てなわけで、ほいっ!」
そう言ってアリリオくんは、私を抱きかかえたまま空高く飛んで行く。
[朝蔵 大空]
「ちょっと!」
[アリリオ]
「ぼくは紳士なので、姫をお家まで送っていきますっ!」
あっという間に私は家まで送り届けられ、窓から私の部屋に侵入され、ベッドへと寝かされる。
[アリリオ]
「はいっ、高速パジャマ早着替え〜♪ シュバババ!」
[朝蔵 大空]
「わわわ!」
目にも止まらぬ速さで、パジャマに着替えさせられた!!
[アリリオ]
「ふふ、今夜はお疲れ様……ゆっくりおやすみ、ぼくのお姫様」
額にキスを落とされる、そして私の意識もそこで落ちる……。
……。
[???]
『ソ……様』
……ん?
[???]
『ソラ様……』
誰かが私の名前を呼んでいる。
[如月 凛]
「おやすみのところ、すみません……」
[朝蔵 大空]
「リンさん!?」
[如月 凛]
「シー……静かにっ」
[朝蔵 大空]
「はっ、ごめんなさい?」
目を開けると、目の前にリンさんが立っていた。
[如月 凛]
「あの悪魔は、少し前に部屋を出て西の方角へと飛んで行きました」
[朝蔵 大空]
「リンさん大変なんです、アリリオくんに私の魂? を、食べられて……」
[如月 凛]
「まったく破廉恥です」
[朝蔵 大空]
「何が!?」
私はされたことを、そのまま説明したまでで……。
[如月 凛]
「ソラ様、私は貴女にあーしろだとか、こーしなさいとは言えません。 だけど、これだけは預けておきたかったのです」
[朝蔵 大空]
「これは……?」
リンさんから渡されたものは、水晶のような石が付いたチャームだった。
[如月 凛]
「御守りのようなものです、気休めにしかならないと思いますが……」
[朝蔵 大空]
「ありがとうございます……あの、ミギヒロ達は……アリリオくんは、何を企んでいると思いますか?」
[如月 凛]
「私にも分からないんです。 アリリオ様とミギヒロ様の目的は、一緒ではなかった……今はそれしか」
[朝蔵 大空]
「と、友達が誘拐されたんです! 助けて下さい!!」
[如月 凛]
「ソラ様、はっきり申し上げます。 彼らを救うことが出来るのは、ソラ様……貴女にしか出来ません!」
私にしか、出来ない?
[朝蔵 大空]
「そんな……助けてくれないんですか?」
[如月 凛]
「すみません。 私にこれ以上の干渉は許されません、私は天使なので」
[朝蔵 大空]
「私はどうすれば……」
[如月 凛]
「あの悪魔が戻って来る前に、私は行きます……では」
リンさんは私に背中を向け、白い光の中へと消えて行った。
……。
[アリリオ]
「やぁ、マイプリンセス! よく眠れたかな〜?」
[朝蔵 大空]
「……」
朝が来た。
[アリリオ]
「さぁ今日からまた、朝蔵大空のつまらなくない人生の、新たな1ページが始まるよ〜!」
[朝蔵 大空]
「ねぇ、アリリオくん」
[アリリオ]
「なになに〜、どうしたの姫〜?」
私は、今最大に気になっていることがあった。
[朝蔵 大空]
「卯月くんはどこ?」
[アリリオ]
「……」
私がそう尋ねると、陽気そうだったアリリオくんの表情が、一変して不機嫌そうになった。
[アリリオ]
「はぁ、まだあんな奴のことなんて気にしてるんだ?」
[朝蔵 大空]
「卯月くんのことも、アリリオくんが誘拐したの?」
[アリリオ]
「あーあ健気なこった、あんなことされたって言うのに」
……あんなこと?
[アリリオ]
「あ、そっかそっか。 痛みも感じないほどにスパッと首切られちゃったもんね〜」
[朝蔵 大空]
「首? ……!!?」
鏡を見ると、私の首に確かに横一線傷跡のようなものが刻まれていた。
何これ……?
[朝蔵 大空]
「卯月くん……」
今でも思い出せる、彼との大切な日々。
──『朝蔵さん』
優しい声で私を呼んでくれる彼、貴方はこんな私に無償の愛を与えてくれた。
だけどその愛を一度、自ら手放さそうした。
これは、そんな私への罰だ。
ぽたぽたと私の頬から、涙が流れる。
[朝蔵 大空]
「みんなに、会いたいよ……」
貴方のいない世界は、本当に退屈だ。
「また会える日まで」おわり……。
第3傷「新緑」 〜完〜
以上、13話(26部分)を以ちまして『悲恋の大空』の3章を終了させて頂きます。
最後に、ここまで読んで下さった優しい読者様にお願いがあります。
この小説に作品フォロー、評価☆☆☆、応援♡、コメントなどをしてもらえると作者は大変喜び、今後の執筆の励みにもなります。
頑張りますのでどうかこれからも、『悲恋の大空』をよろしくお願い致します!

