悲恋の大空

[???]
 「ちょっと待ったーーー!!」



 モブ女集団と、不尾丸達の前に現れたのは……?



[不尾丸 論]
 「!?」


[音乃 渚]
 「論、上を見て下さい!」


[不尾丸 論]
 「上っ!?」



 その時……周囲の視線は、物寂しいイベントステージへと集まる。





 パーパーパパッーー!♪





[不尾丸 論]
 「何この音……」



 ☆☆☆



[ワガナカ・イエロー(嫉束)]
 「幸せいっぱい! ワガナカ・イエロー!!」


[ワガナカ・マゼンタ(巣桜)]
 「や、優しさ大事……ワガナカ・マゼンタぁ〜……」



 ──何かが始まった。



[ワガナカ・オレンジ(刹那)]
 「元気いっぱい!! ワガナカ・オレンジー!!!」


[ワガナカ・レッド(笹妬)]
 「俺はやらない……」


[ワガナカ・ブルー(狂沢)]
 「大声なら得意です!!! ワガナカ・ブルー!!!!!」


[ワガナカ・イエロー(嫉束)]
 「最強戦隊、ワガナカファイブ!☆」





 バーーン!!!





 全身タイツ姿の、黄・赤・青・桃・橙……合わせて5人の戦士達が、不尾丸達の前に現れたのであった。



[不尾丸 論]
 「バーン……じゃねぇよ! あと……5人中4人暖色で、寒色が青しかいないの気になるな〜」


[音乃 渚]
 「そこ気になるんですね!」


[原地 洋助]
 「論!」


[仁ノ岡 塁]
 「大丈夫か!?」



 原地と仁ノ岡が、不尾丸の姿を見つけて駆け寄ってくる。



[原地 洋助]
 「……心配したよ」


[仁ノ岡 塁]
 「無事で良かった!」


[不尾丸 論]
 「お前ら……ふへへ」



 3人は、互いに向き合って微笑み合う。



[音乃 渚]
 「論、()いお友達を持ちましたね。 大事にしましょうね」


[不尾丸 論]
 「あんたに言われなくたって……」


[仁ノ岡&原地]
 「…………」



 仁ノ岡と、原地は気まずそうに黙っている。





 ビュンッ……!!





 その静けさを断ち切るように、不尾丸達の横を何者かが横切る。



[土屋 遊戯]
 「なっちゃん〜!! 会いたかったよ〜♡」


[音乃 渚]
 「ゆうくん♪」



 感動の再会と共に、周りの目なんて気にせず、涙して抱き合うふたり。



[花澤 岬]
 「なんとか、退学は(まぬが)れたな」


[古道 大悟]
 「あはは…………ん?」





 ざわ……ざわ…………。





[夢女子A]
 『まさか!? や、やや、男×男(やおい)……!?』


[夢女子B]
 『BLは地雷なの!!』


[夢女子C]
 『もう界隈やめますっ!!』
 
 

 土屋と音乃が抱き合う光景を見て、周囲の一部の女子達は、腹を立てているようだった。



[笹妬 吉鬼]
 「急にどうしたんだ?」


[巣桜 司]
 「そうか……夢◎腐×!!」


[狂沢 蛯斗]
 「ゆめにじゅうまるふばつ……?」


[刹那 五木]
 「何それ〜?」


[巣桜 司]
 「イケメンを愛でたい気持ちはあるけど、イケメン同士の絡みは求めていない人達のことです」



 この手の話題に少し詳しい巣桜が、得意げに語る。



[嫉束 界魔]
 「なるほど!」



 嫉束は隣に立っている笹妬を、強引に抱き寄せる。



[笹妬 吉鬼]
 「うわっ、なんだよ!」


[嫉束 界魔]
 「みんなー!! 隣の人と抱き合って!!」



 嫉束は、周囲の男子達に大声で呼び掛ける。



[巣桜 司]
 「えっ///」


[狂沢 蛯斗]
 「それになんの意味が……」





 きゃ〜〜〜!!!!!





[夢女子D]
 『やめてー!!』


[夢女子E]
 『おぞましい〜〜!!』



 一斉に目を覆い隠し始める、夢女子達。



[狂沢 蛯斗]
 「なるほど!」


[巣桜 司]
 「っ……きゃっ」



 理解した狂沢が、巣桜の胸に飛び付く。



[巣桜 司]
 (ぼくの腕の中に!! ツンデレの狂沢くんが自ら!?)


[巣桜 司]
 「狂沢くん……ふふっ、可愛いです♡」



 その時、巣桜達の背後から……。



[刹那 五木]
 「おれも混ぜてよ!」


[巣桜 司]
 「!?」



 大柄な刹那が、小柄な狂沢と中肉中背(ちゅうにくちゅうぜ)の巣桜を、後ろから包み込む。



[狂沢 蛯斗]
 「ふぇっ……!?」


[巣桜 司]
 「おおおいぃ、要らねぇんだよ!!」


[刹那 五木]
 「え、なんで巣桜くんガチギレ??」



 刹那には、巣桜が何故怒っているのか分からない。



[巣桜 司]
 「離せ!! この百合の間に挟まる〇〇〇〇〇……が!!」


[刹那 五木]
 「わっ!? 放送禁止用語!!?」


[狂沢 蛯斗]
 「かはっ、かはっ……」



 ふたりに挟まれて身動きが取れない狂沢は、息が出来なくて苦しんでいた。



[夢女子A]
 『酷い! こんなのあんまりよ!』


[夢女子B]
 『男同士で仲良くするな!』


[夢女子C]
 『あたしを取り合いなさいよーー!!』



 断末魔を叫びながら、次々と夢女子達が()ぜて消滅していく。



[不尾丸 論]
 「何が起こっているんだ……」


[仁ノ岡 塁]
 「まさに混沌!」


[原地 洋助]
 「誰かツッコミ入れて……」



 1年生トリオは、肩を寄せ合って隅のほうで震えている。



[音乃 渚]
 「まぁ、なんと言うことでしょう」


[土屋 遊戯]
 「おえ、他人のホモはやっぱ見ててきついね……」


[古道 大悟]
 「オレはもちろん、岬とくっつく〜♡」


[花澤 岬]
 「てか俺達、何やらされてるんだ?」





 ピカーン……!!





 その時、空が一瞬明るくなる。


 その場にいる全員が、空を眺めた。



[笹妬 吉鬼]
 「……は?」


[嫉束 界魔]
 「ねぇ……吉鬼。 僕達、夢を見ているわけじゃないよね?」



 暗い紺色の夜空は一瞬にして、禍々しい緑色へと変わった。


 ……。



 ──そろそろ起きる時間です。


 ──そろそろ起きる時間です。


 ──そろそろ起きる時間です。





 ジリリリリリ!!





 目覚ましの音が聞こえる。



[朝蔵 大空]
 「……朝」



 私の名前は、朝蔵大空。


 高校2年生の、友達の少ない女の子。



[朝蔵 大空]
 「起きなきゃ……」



 私はいつものように着替え、朝食を食べ学校に行く。


 ひとりで通学路を歩く、教室に行く。



[永瀬 里沙]
 「大空おはよ! ギリギリ間に合ったね」



 この子は私の中学からの親友、永瀬里沙ちゃん。



[朝蔵 大空]
 「え?」



 時計を見ると、朝のホームルームまであと2分前だった。



[朝蔵 大空]
 「あっ」


[二階堂先生]
 「みんな、おはよう。 んじゃ、ホームルーム始めっぞ〜」



 そんなに家出るの遅かったかな……?



[文島 秋]
 「そろそろ生徒会選挙のシーズンだな」


[木之本 夏樹]
 「興味ねぇ〜」



 このふたりは、木之本夏樹くんと文島秋くん。



[永瀬 里沙]
 「昨日の《《花火大会》》楽しかったね〜!」


[朝蔵 大空]
 「うーん」



 あれ?



[文島 秋]
 「どうしたの、朝蔵ちゃん?」


[朝蔵 大空]
 「あ……その、今日誰か休んでるの?」


[木之本 夏樹]
 「休み?」


[永瀬 里沙]
 「誰も休んでないわよ?」



 私がよく話す人、1番目に里沙ちゃん、次に文島くん、そして木之本くん……。



[永瀬 里沙]
 「てかさ、やっぱ次の生徒会長は文島くんが狙ってる感じ〜?」


[文島 秋]
 「一応、ね」


[木之本 夏樹]
 「投票だり〜」



 うん、そうだよね。


 私の友達は、この3人だけ。



[二階堂先生]
 「ほんじゃ帰りの会終わり、お前ら気を付けて帰るんだぞ〜」



 何も特別なことが起きることも無く、あっさりと終わった学校生活。



[二階堂先生]
 「雨降ってるな……お前ら、廊下はくれぐれも走らな……」


[永瀬 里沙]
 「部活だぁああ!!!」



 先生の言葉を無視して、ダッシュで部活へ向かう里沙ちゃん。


 私も、帰らなきゃ。



[朝蔵 大空]
 「げっ、傘忘れた……」



 私は、折り畳み傘を忘れてしまった。



[朝蔵 大空]
 「そんなに降ってないし、無しでも帰れるか……」



 そう判断した私は、傘を差さずに帰路へと進む。





 ザァ……!!





[朝蔵 大空]
 「えー、最悪……」



 学校を出る時は小雨だったのに、途中から本降りへと変わった。


 私は近くの公園へと駆け込み、雨宿り出来るベンチへと座る。



[朝蔵 大空]
 「ちょっと休も」



 雨が弱くなったタイミングでまた出発しよう、そう考えた私は静かに待つ。


 ──15分後。





 ザァー!!





[朝蔵 大空]
 「……」



 どうしよう、全く止む気配が無い……。


 これもしかして、夜中降るやつ?



[朝蔵 大空]
 「はぁ、ついてないな…………ん?」


[白い仔猫]
 「にゃあ……にゃあ」



 猫の鳴き声が聞こえる、私は声のするほうを振り向く。



[木之本 夏樹]
 「可愛すぎんだろ……」


[白い仔猫]
 「にゃあ〜」


[朝蔵 大空]
 「木之本くん!!?」



 木之本くんが、野良猫に傘を差して腰を下ろして、仔猫を撫でている。



[木之本 夏樹]
 「うぇっ!? そ、大空ちゃ……ん!」


[朝蔵 大空]
 「えっ?」



 今、木之本くんが私の下の名前を呼んだ……?


 そんな呼び方、今までされてたっけ??



[木之本 夏樹]
 「こ、こんな所で何してんの?」


[朝蔵 大空]
 「木之本くんこそ……」


[木之本 夏樹]
 「俺は、この野良猫を見つけて……」


[白い仔猫]
 「にゃ」


[朝蔵 大空]
 「ああ……私は、傘を忘れてしまって」


[木之本 夏樹]
 「雨宿りしていた、と言うわけか」



 なんか恥ずかしい……。



[朝蔵 大空]
 「まあ、お構いなく」


[木之本 夏樹]
 「ん!」



 気付くと木之本くんが私の隣まで来ていて、私に自分の傘を差し出す。



[朝蔵 大空]
 「な、何?」


[木之本 夏樹]
 「俺の! 俺の傘、入りなよ」


[朝蔵 大空]
 「オレノカサハイリナヨ……?」



 それってまさか、相合傘!!?


 そんなのダメだ、だって私には愛しの…………。



[朝蔵 大空]
 「愛しの……」


[木之本 夏樹]
 「え?」



 あれ、私……なんて言おうとしたんだっけ?



[木之本 夏樹]
 「か、風邪ひくぜ! ほら!」


[朝蔵 大空]
 「あ、ありがとう」



 私は木之本くんの隣に立ち、一緒の傘に入らせてもらう。



[白い仔猫]
 「にゃ……」


[朝蔵 大空]
 「その子、連れてくの?」


[木之本 夏樹]
 「し……心配だし、一旦うちに連れて行こうと思って」


[朝蔵 大空]
 「へぇ、木之本くんって優しいんだね」


[木之本 夏樹]
 「は!? べべべ別に優しくねーし!」



 別にそこ否定しなくても良いのに……。



[朝蔵 大空]
 「木之本くんの家って、この近く?」


[木之本 夏樹]
 「うん、もうすぐ着くけど……寄ってく?」


[朝蔵 大空]
 「え!」


[木之本 夏樹]
 「え!!!?」



 な、なんで木之本くんのほうがびっくりしてるの!?



[木之本 夏樹]
 「ちちち、違うんだ! へ、変な意味とかじゃなくて!!」


[朝蔵 大空]
 「う、うん」


[木之本 夏樹]
 「あ、俺ん家着いたわ」



 ふーん、木之本くんの家……。



[朝蔵 大空]
 「えっ、でっか!!」



 思わず、少々下品な言い方をしてしまった。



[朝蔵 大空]
 「ほ、ほんとにここが木之本くんのお家なの!?」



 明らかに庶民の家ではない、貴族様が住んでいそうな御屋敷が、目の前に佇んでいた。



[木之本 夏樹]
 「あ、やっぱりびっくりされるよな〜……」


[朝蔵 大空]
 「え! え? え!?」



 き、き、き、木之本くんお坊ちゃま(そう言うキャラ)だったのぉ!!?



[木之本 夏樹]
 「だ、誰にも言わないでくれ……俺の家がこんななの、学校の奴だと文島ぐらいにしか話してないからさ」


[朝蔵 大空]
 「う、うん。 言わないけど……」


[木之本 夏樹]
 「そ、それで、マジで寄ってく?」


[朝蔵 大空]
 「ゴクリ……」



 悔しいけど、ちょっと気になる。


 ──いざ、木之本キャッスルへ。





 つづく……。