[アリリオ]
「えーと今、緊急で動画を回しています」
配信者的なノリで突然、淡々と実況し始めるアリリオ。
[アリリオ]
「某花火大会会場で……頭部が切り離された女子高校生の遺体が、発見されました〜」
[加藤 右宏]
「ン?」
[朝蔵 夕唯]
「ん……?」
それを、ふたりは珍しそうに眺めている。
[アリリオ]
「あーごめん、このネタ伝わんなかったぁ〜。 で……これ、どうする?」
[加藤 右宏]
「とりあえズ。 人目の届かない場所に移動すっゾ!」
ミギヒロは、大空の首から下を……アリリオは、大空の頭部を抱きかかえて持つ。
ピカーーーン!!
[如月 凛]
「貴方達〜〜〜! 何をやってるのですか〜〜〜!?」
暗い空の中から光の輪と共に、リンが飛び出て来る。
[朝蔵 夕唯]
「……」
[如月 凛]
「おおっと……あ、貴方は……!?」
凛が目の前の男を見て、ギョッとして立ち止まる。
[アリリオ]
「ふーん……君が噂の、アサクラ ユイ さん?」
アサクラ ユイ、青黒い頭髪に、真っ黒な目の青年。
[朝蔵 夕唯]
「うん……人が死んだって言うのに。 みんな冷静だね」
目は据わり、表情は眉ひとつ動かさない。
[加藤 右宏]
「まぁナ」
ミギヒロとアリリオが、ひとりの人間の死に動じることは無い。
悪魔だったから。
[アリリオ]
「ひとりを除いて……ね」
アリリオは、とある人物のほうに視線を移す。
[如月 凛]
「シン! 大丈夫ですか?」
[卯月 神]
「……」
[如月 凛]
「って……大丈夫なわけないですよね」
卯月は、その場で膝を着いて返答が無い。
瞳を閉じて、ただ静かに俯いている。
[如月 凛]
「ソラ様……」
木陰には頭部を切断され、動かなくなった大空が横たわっている。
生命活動が止まり、冷えゆく肉の物体と化している。
シュー…………ボッ……。
[如月 凛]
「あっ!」
リンが駆け寄ると、大空の胸付近から何かが捻り出てきた。
その何かの正体は、" 青い火の玉 " だった、それをリンがそっと掬い取るのだ。
[如月 凛]
「よかった、まだ温かい……」
ホワホワと、心地好い温度の火の玉は、リンの手の中を細かく揺れる。
リンは安堵した、けれど次の瞬間 ──。
シュバッ……!!
[アリリオ]
「もーらいっ!」
[如月 凛]
「っ……ちょっ!?」
アリリオが大空の魂を、軽快な身のこなしでリンから奪い取る。
[加藤 右宏]
「アリリオ、ナイスゥ〜」
[アリリオ]
「〜♪」
大空の魂は、悪魔陣営の元へと奪われてしまった!
[如月 凛]
「酷すぎます! シンに、人殺しをさせるなんて!!」
[加藤 右宏]
「今更何言ってんダ? ンなの、《《最初から》》ダろ」
[アリリオ]
「呪いを完成させるには、天使に殺人をさせなければならない。 そうだったよね、王子?」
[加藤 右宏]
「あア」
[如月 凛]
「は……」
一切悪びれることの無い悪魔に、リンは言葉を失ってしまう。
[朝蔵 夕唯]
「……」
夕唯は何も言わず、卯月の肩に手を置く。
[卯月 神]
「……」
[朝蔵 夕唯]
「じゃ……」
[加藤 右宏]
「ドコへ行くんダ?」
夕唯が草の上に落ちていた、大空の簪を拾い上げる。
[朝蔵 夕唯]
「……在るべき所へ帰る」
そう言い残して夕唯は、簪を握ったまま暗闇の中へと消えて行ってしまった。
[加藤 右宏]
「相変わらズ、さっぱりしてるナー!」
[アリリオ]
「感情が無いもんね、彼。 アサクラユイ、興味深い……」
夕唯が消え、重苦しい空気が少しマシになる。
[卯月 神]
「……」
[如月 凛]
「さぁシン、貴方も。 《《行くべき》》所へ」
[卯月 神]
「……はい」
リンが卯月の手を取り、卯月が立ち上がったと同時に引き連れて行く。
[加藤 右宏]
「お別れの言葉は?」
[卯月 神]
「……」
ミギヒロの言葉に、卯月は足を止めてしまう。
[如月 凛]
「さぁ、急ぎましょう」
[アリリオ]
「あれれ? 見ていかないの? 《《蘇生》》」
[如月 凛]
「貴方達で勝手にやって下さい、シンをこれ以上追い詰めないで。 全部知ってるくせに」
リンは冷たい目でアリリオを見る、その後は振り返ることも無く、卯月を連れて光の輪の中に消えた。
[アリリオ]
「あはは、怒られちゃった」
[加藤 右宏]
「ヨシ、やるゾ」
[アリリオ]
「はーい」
アリリオは先ほどの火の玉を両手で持ち、大空の死体の傍へと歩き出す。
[アリリオ]
「フフフ」
ミギヒロの死角では、アリリオは不敵な笑みを浮かべていた。
……。
その頃、男子達は……。
[刹那 五木]
「ふぅ、ここまで来れば安全かな?」
[巣桜 司]
「はぁ、はぁ、つ、疲れたっ……」
巣桜は膝を抑えて、肩で息する。
[笹妬 吉鬼]
「なんでこうなるんだよ」
[狂沢 蛯斗]
「この人のせいです!」
狂沢が、嫉束を指差す。
[嫉束 界魔]
「なんで僕!?」
男子達は、発情したモブ女子達から、逃げて来ていた。
[狂沢 蛯斗]
「貴方が女性を誘惑するから、会場が大混雑になったんです!」
[嫉束 界魔]
「してないよ! 誘惑なんて!!」
狂沢に責任を追及された嫉束は、急いで否定しようとする。
[仁ノ岡 塁]
「フッハッハッハーっ、我の魅了スキルはやはり最強だな」
[原地 洋助]
「はぁ……はいはいっ」
ナルシズムを炸裂させる仁ノ岡を、原地が軽く受け流す。
[狂沢 蛯斗]
「おや? 彼らは……」
[刹那 五木]
「おー! 1年ズじゃーん」
狂沢と刹那が、離れた先にいる仁ノ岡と原地に気付く。
[原地 洋助]
「うわ」
[仁ノ岡 塁]
「むむっ、我らのことか?」
2年生組が、仁ノ岡と原地の元へと駆け寄る。
[原地 洋助]
「あっ……!」
すると突然、原地が何かに気付き辺りを見渡し始めた。
[巣桜 司]
「ど、どうしたんですか?」
[仁ノ岡 塁]
「洋助?」
[原地 洋助]
「論がいない!!」
サンコイチのリーダーである不尾丸が、この場に居ない。
[嫉束 界魔]
「えっ!?」
[笹妬 吉鬼]
「友達か?」
[嫉束 界魔]
(あの生意気な原地くんが、見たこと無い焦り方してる……)
イメージとは違う、原地の見たこと無い姿に、嫉束は驚いていた。
[原地 洋助]
「そんなっ……」
[仁ノ岡 塁]
「と、途中ではぐれてしまったのか」
[刹那 五木]
「ん? ねぇ〜、電話してみたら?」
原地は刹那の声が聞こえていないようで、夢中で付近を歩き回り、時々立ち止まって遠くを見つめる。
[仁ノ岡 塁]
「待ってくれ〜洋助!!」
仁ノ岡が原地の後に続き、走り出す。
[刹那 五木]
「あれれ……?」
[嫉束 界魔]
「ねぇ! 僕らも一緒に、探してあげようよ!」
[狂沢 蛯斗]
「……緊急事態のようですね」
仁ノ岡達を追い掛けるように、嫉束と狂沢は他を3人を置いて行く。
[笹妬 吉鬼]
「おい、界魔! ……はぁ、やれやれ」
[巣桜 司]
「あっ! お、置いてかないで下さい、狂沢く〜ん!!」
笹妬と巣桜はふたりの背中を追い掛け、走って行ってしまった。
[刹那 五木]
「みんな行っちゃった……へへ、面白い! おれも行こ」
── 上空に、黒い影が2つ並ぶ。
[加藤 右宏]
「間抜けな奴らだゼ」
[アリリオ]
「さぁ。 サンプル達には、1箇所に集まってもらうよ」
……。
[古道 大悟]
「はぁ〜、やっと撒けた〜」
[土屋 遊戯]
「もうっ! この、ぼくに長距離を走らせるって、どう言うこと!!? んーもっ、マジ有り得ないんだけど!!!」
[花澤 岬]
「静かにしなさい」
一方その頃、別の所に逃げて来ていた上級生達。
[土屋 遊戯]
「あー!! ちょっと待って、なっちゃんがいないよ!!?」
[古道 大悟]
「あ、ほんとだ。 別の道に逃げたのかな?」
そこには、音乃の姿だけが無かった。
[花澤 岬]
「いや、あの人は運動不足だろうから。 恐らく、奴らに捕まったんだろ」
[古道 大悟]
「えっ!? やばいじゃん?!」
[花澤 岬]
「別にやばくないだろ」
[古道 大悟]
「み、岬はカイチョーが心配じゃないの?」
[花澤 岬]
「全く」
古道は、音乃のことを全く心配しない花澤に、困惑する。
[土屋 遊戯]
「おい! お前ら、なっちゃんを助けに行くのを手伝え!!」
[古道 大悟]
「ウッ……あんな大勢の女子達の所に、また戻るの……?」
古道は青ざめた表情のまま、肩を落とす。
[土屋 遊戯]
「これは命令だぞ! 絶対に従ってね! さもないと退学だからな!!」
[花澤 岬]
「チッ、仕方無い。 戻るぞ、大悟」
[古道 大悟]
「え……う、うん!」
[土屋 遊戯]
「疲れた!! おんぶしろ!!!」
[古道 大悟]
「え、え〜?」
断れない古道は、土屋を自分の背中に乗せる。
そして、音乃を助けに行く為、3人は来た道を戻って行った。
[アリリオ]
「よし、こっちも行ったね」
[加藤 右宏]
「残りのふたりは?」
[アリリオ]
「えーっと……こっちみたい!」
[加藤 右宏]
「ヨ〜し、急げ〜!!」
……。
この頃の不尾丸……。
[不尾丸 論]
「車椅子も失くしたし、塁と洋助はオレを置いてくし、ガチで疲れたし、最悪」
フラフラの足で壁を伝って、駅前を歩いていた不尾丸。
[不尾丸 論]
「そして、マジで最悪なのが……」
ぐーぎゅるるるるる……。
[音乃 渚]
「お腹が空いたので、何か食べませんか?」
[不尾丸 論]
「この人が一緒だって言うねぇ……」
[音乃 渚]
「ん? 何か言いました?」
不尾丸の小言は、音乃の耳には届いていない。
[不尾丸 論]
「いいえ♪ ぼくは何も言ってませんよ、会長さん♪」
[音乃 渚]
「……そうだ!!」
[不尾丸 論]
「!?」
音乃はいきなり、不尾丸の前で腰を下ろす。
[音乃 渚]
「論!」
[不尾丸 論]
「何?」
[音乃 渚]
「ワタシの背中に乗って」
[不尾丸 論]
「は……? いい……」
不尾丸は後ろに退き、音乃の提案をやんわりと断る。
[音乃 渚]
「どうして? 疲れたのでしょう?」
音乃は不思議そうな顔をして、不尾丸の顔を見る。
[不尾丸 論]
「疲れたとしても、あんたの背中には乗らないよ」
[音乃 渚]
「遠慮しないでっ!」
[不尾丸 論]
「く……来るなぁ」
音乃は、背中を向けたまま不尾丸に迫る。
[不尾丸 論]
「ちょっ……」
[音乃 渚]
「さ、車椅子さん探しに行きましょう!」
不尾丸は音乃に、力ずくで背中に背負われてしまった。
[不尾丸 論]
「おい! マジで要らねぇってそう言うの!! 降ろせよ!」
[音乃 渚]
「暴れない♪ 暴れない♪」
不尾丸は、本気で音乃を拒絶する。
[発情メスA]
『きゃあ〜♡ 何あれ!!♡』
[発情メスB]
『うお♡ おにショタ最高〜♡』
[発情メスC]
『あーん♡ あの間に挟まりたいわぁ♡』
その時、嫌らしい視線がふたりに集まる。
[不尾丸 論]
「!!」
[音乃 渚]
「おや?」
発情した女子達は、不尾丸達の周りを囲み、逃げ道を塞ぐ。
[不尾丸 論]
「やばい……!」
[音乃 渚]
「まぁ……困りましたねぇ」
焦る不尾丸、呑気な音乃。
[発情メスD]
『捕まえちゃう!♡』
[不尾丸 論]
「もうダメだ、終わった」
── と、不尾丸が絶望したその時。
[???]
『ちょっと待ったーーー!!』
「オータムフェス」おわり……。
「えーと今、緊急で動画を回しています」
配信者的なノリで突然、淡々と実況し始めるアリリオ。
[アリリオ]
「某花火大会会場で……頭部が切り離された女子高校生の遺体が、発見されました〜」
[加藤 右宏]
「ン?」
[朝蔵 夕唯]
「ん……?」
それを、ふたりは珍しそうに眺めている。
[アリリオ]
「あーごめん、このネタ伝わんなかったぁ〜。 で……これ、どうする?」
[加藤 右宏]
「とりあえズ。 人目の届かない場所に移動すっゾ!」
ミギヒロは、大空の首から下を……アリリオは、大空の頭部を抱きかかえて持つ。
ピカーーーン!!
[如月 凛]
「貴方達〜〜〜! 何をやってるのですか〜〜〜!?」
暗い空の中から光の輪と共に、リンが飛び出て来る。
[朝蔵 夕唯]
「……」
[如月 凛]
「おおっと……あ、貴方は……!?」
凛が目の前の男を見て、ギョッとして立ち止まる。
[アリリオ]
「ふーん……君が噂の、アサクラ ユイ さん?」
アサクラ ユイ、青黒い頭髪に、真っ黒な目の青年。
[朝蔵 夕唯]
「うん……人が死んだって言うのに。 みんな冷静だね」
目は据わり、表情は眉ひとつ動かさない。
[加藤 右宏]
「まぁナ」
ミギヒロとアリリオが、ひとりの人間の死に動じることは無い。
悪魔だったから。
[アリリオ]
「ひとりを除いて……ね」
アリリオは、とある人物のほうに視線を移す。
[如月 凛]
「シン! 大丈夫ですか?」
[卯月 神]
「……」
[如月 凛]
「って……大丈夫なわけないですよね」
卯月は、その場で膝を着いて返答が無い。
瞳を閉じて、ただ静かに俯いている。
[如月 凛]
「ソラ様……」
木陰には頭部を切断され、動かなくなった大空が横たわっている。
生命活動が止まり、冷えゆく肉の物体と化している。
シュー…………ボッ……。
[如月 凛]
「あっ!」
リンが駆け寄ると、大空の胸付近から何かが捻り出てきた。
その何かの正体は、" 青い火の玉 " だった、それをリンがそっと掬い取るのだ。
[如月 凛]
「よかった、まだ温かい……」
ホワホワと、心地好い温度の火の玉は、リンの手の中を細かく揺れる。
リンは安堵した、けれど次の瞬間 ──。
シュバッ……!!
[アリリオ]
「もーらいっ!」
[如月 凛]
「っ……ちょっ!?」
アリリオが大空の魂を、軽快な身のこなしでリンから奪い取る。
[加藤 右宏]
「アリリオ、ナイスゥ〜」
[アリリオ]
「〜♪」
大空の魂は、悪魔陣営の元へと奪われてしまった!
[如月 凛]
「酷すぎます! シンに、人殺しをさせるなんて!!」
[加藤 右宏]
「今更何言ってんダ? ンなの、《《最初から》》ダろ」
[アリリオ]
「呪いを完成させるには、天使に殺人をさせなければならない。 そうだったよね、王子?」
[加藤 右宏]
「あア」
[如月 凛]
「は……」
一切悪びれることの無い悪魔に、リンは言葉を失ってしまう。
[朝蔵 夕唯]
「……」
夕唯は何も言わず、卯月の肩に手を置く。
[卯月 神]
「……」
[朝蔵 夕唯]
「じゃ……」
[加藤 右宏]
「ドコへ行くんダ?」
夕唯が草の上に落ちていた、大空の簪を拾い上げる。
[朝蔵 夕唯]
「……在るべき所へ帰る」
そう言い残して夕唯は、簪を握ったまま暗闇の中へと消えて行ってしまった。
[加藤 右宏]
「相変わらズ、さっぱりしてるナー!」
[アリリオ]
「感情が無いもんね、彼。 アサクラユイ、興味深い……」
夕唯が消え、重苦しい空気が少しマシになる。
[卯月 神]
「……」
[如月 凛]
「さぁシン、貴方も。 《《行くべき》》所へ」
[卯月 神]
「……はい」
リンが卯月の手を取り、卯月が立ち上がったと同時に引き連れて行く。
[加藤 右宏]
「お別れの言葉は?」
[卯月 神]
「……」
ミギヒロの言葉に、卯月は足を止めてしまう。
[如月 凛]
「さぁ、急ぎましょう」
[アリリオ]
「あれれ? 見ていかないの? 《《蘇生》》」
[如月 凛]
「貴方達で勝手にやって下さい、シンをこれ以上追い詰めないで。 全部知ってるくせに」
リンは冷たい目でアリリオを見る、その後は振り返ることも無く、卯月を連れて光の輪の中に消えた。
[アリリオ]
「あはは、怒られちゃった」
[加藤 右宏]
「ヨシ、やるゾ」
[アリリオ]
「はーい」
アリリオは先ほどの火の玉を両手で持ち、大空の死体の傍へと歩き出す。
[アリリオ]
「フフフ」
ミギヒロの死角では、アリリオは不敵な笑みを浮かべていた。
……。
その頃、男子達は……。
[刹那 五木]
「ふぅ、ここまで来れば安全かな?」
[巣桜 司]
「はぁ、はぁ、つ、疲れたっ……」
巣桜は膝を抑えて、肩で息する。
[笹妬 吉鬼]
「なんでこうなるんだよ」
[狂沢 蛯斗]
「この人のせいです!」
狂沢が、嫉束を指差す。
[嫉束 界魔]
「なんで僕!?」
男子達は、発情したモブ女子達から、逃げて来ていた。
[狂沢 蛯斗]
「貴方が女性を誘惑するから、会場が大混雑になったんです!」
[嫉束 界魔]
「してないよ! 誘惑なんて!!」
狂沢に責任を追及された嫉束は、急いで否定しようとする。
[仁ノ岡 塁]
「フッハッハッハーっ、我の魅了スキルはやはり最強だな」
[原地 洋助]
「はぁ……はいはいっ」
ナルシズムを炸裂させる仁ノ岡を、原地が軽く受け流す。
[狂沢 蛯斗]
「おや? 彼らは……」
[刹那 五木]
「おー! 1年ズじゃーん」
狂沢と刹那が、離れた先にいる仁ノ岡と原地に気付く。
[原地 洋助]
「うわ」
[仁ノ岡 塁]
「むむっ、我らのことか?」
2年生組が、仁ノ岡と原地の元へと駆け寄る。
[原地 洋助]
「あっ……!」
すると突然、原地が何かに気付き辺りを見渡し始めた。
[巣桜 司]
「ど、どうしたんですか?」
[仁ノ岡 塁]
「洋助?」
[原地 洋助]
「論がいない!!」
サンコイチのリーダーである不尾丸が、この場に居ない。
[嫉束 界魔]
「えっ!?」
[笹妬 吉鬼]
「友達か?」
[嫉束 界魔]
(あの生意気な原地くんが、見たこと無い焦り方してる……)
イメージとは違う、原地の見たこと無い姿に、嫉束は驚いていた。
[原地 洋助]
「そんなっ……」
[仁ノ岡 塁]
「と、途中ではぐれてしまったのか」
[刹那 五木]
「ん? ねぇ〜、電話してみたら?」
原地は刹那の声が聞こえていないようで、夢中で付近を歩き回り、時々立ち止まって遠くを見つめる。
[仁ノ岡 塁]
「待ってくれ〜洋助!!」
仁ノ岡が原地の後に続き、走り出す。
[刹那 五木]
「あれれ……?」
[嫉束 界魔]
「ねぇ! 僕らも一緒に、探してあげようよ!」
[狂沢 蛯斗]
「……緊急事態のようですね」
仁ノ岡達を追い掛けるように、嫉束と狂沢は他を3人を置いて行く。
[笹妬 吉鬼]
「おい、界魔! ……はぁ、やれやれ」
[巣桜 司]
「あっ! お、置いてかないで下さい、狂沢く〜ん!!」
笹妬と巣桜はふたりの背中を追い掛け、走って行ってしまった。
[刹那 五木]
「みんな行っちゃった……へへ、面白い! おれも行こ」
── 上空に、黒い影が2つ並ぶ。
[加藤 右宏]
「間抜けな奴らだゼ」
[アリリオ]
「さぁ。 サンプル達には、1箇所に集まってもらうよ」
……。
[古道 大悟]
「はぁ〜、やっと撒けた〜」
[土屋 遊戯]
「もうっ! この、ぼくに長距離を走らせるって、どう言うこと!!? んーもっ、マジ有り得ないんだけど!!!」
[花澤 岬]
「静かにしなさい」
一方その頃、別の所に逃げて来ていた上級生達。
[土屋 遊戯]
「あー!! ちょっと待って、なっちゃんがいないよ!!?」
[古道 大悟]
「あ、ほんとだ。 別の道に逃げたのかな?」
そこには、音乃の姿だけが無かった。
[花澤 岬]
「いや、あの人は運動不足だろうから。 恐らく、奴らに捕まったんだろ」
[古道 大悟]
「えっ!? やばいじゃん?!」
[花澤 岬]
「別にやばくないだろ」
[古道 大悟]
「み、岬はカイチョーが心配じゃないの?」
[花澤 岬]
「全く」
古道は、音乃のことを全く心配しない花澤に、困惑する。
[土屋 遊戯]
「おい! お前ら、なっちゃんを助けに行くのを手伝え!!」
[古道 大悟]
「ウッ……あんな大勢の女子達の所に、また戻るの……?」
古道は青ざめた表情のまま、肩を落とす。
[土屋 遊戯]
「これは命令だぞ! 絶対に従ってね! さもないと退学だからな!!」
[花澤 岬]
「チッ、仕方無い。 戻るぞ、大悟」
[古道 大悟]
「え……う、うん!」
[土屋 遊戯]
「疲れた!! おんぶしろ!!!」
[古道 大悟]
「え、え〜?」
断れない古道は、土屋を自分の背中に乗せる。
そして、音乃を助けに行く為、3人は来た道を戻って行った。
[アリリオ]
「よし、こっちも行ったね」
[加藤 右宏]
「残りのふたりは?」
[アリリオ]
「えーっと……こっちみたい!」
[加藤 右宏]
「ヨ〜し、急げ〜!!」
……。
この頃の不尾丸……。
[不尾丸 論]
「車椅子も失くしたし、塁と洋助はオレを置いてくし、ガチで疲れたし、最悪」
フラフラの足で壁を伝って、駅前を歩いていた不尾丸。
[不尾丸 論]
「そして、マジで最悪なのが……」
ぐーぎゅるるるるる……。
[音乃 渚]
「お腹が空いたので、何か食べませんか?」
[不尾丸 論]
「この人が一緒だって言うねぇ……」
[音乃 渚]
「ん? 何か言いました?」
不尾丸の小言は、音乃の耳には届いていない。
[不尾丸 論]
「いいえ♪ ぼくは何も言ってませんよ、会長さん♪」
[音乃 渚]
「……そうだ!!」
[不尾丸 論]
「!?」
音乃はいきなり、不尾丸の前で腰を下ろす。
[音乃 渚]
「論!」
[不尾丸 論]
「何?」
[音乃 渚]
「ワタシの背中に乗って」
[不尾丸 論]
「は……? いい……」
不尾丸は後ろに退き、音乃の提案をやんわりと断る。
[音乃 渚]
「どうして? 疲れたのでしょう?」
音乃は不思議そうな顔をして、不尾丸の顔を見る。
[不尾丸 論]
「疲れたとしても、あんたの背中には乗らないよ」
[音乃 渚]
「遠慮しないでっ!」
[不尾丸 論]
「く……来るなぁ」
音乃は、背中を向けたまま不尾丸に迫る。
[不尾丸 論]
「ちょっ……」
[音乃 渚]
「さ、車椅子さん探しに行きましょう!」
不尾丸は音乃に、力ずくで背中に背負われてしまった。
[不尾丸 論]
「おい! マジで要らねぇってそう言うの!! 降ろせよ!」
[音乃 渚]
「暴れない♪ 暴れない♪」
不尾丸は、本気で音乃を拒絶する。
[発情メスA]
『きゃあ〜♡ 何あれ!!♡』
[発情メスB]
『うお♡ おにショタ最高〜♡』
[発情メスC]
『あーん♡ あの間に挟まりたいわぁ♡』
その時、嫌らしい視線がふたりに集まる。
[不尾丸 論]
「!!」
[音乃 渚]
「おや?」
発情した女子達は、不尾丸達の周りを囲み、逃げ道を塞ぐ。
[不尾丸 論]
「やばい……!」
[音乃 渚]
「まぁ……困りましたねぇ」
焦る不尾丸、呑気な音乃。
[発情メスD]
『捕まえちゃう!♡』
[不尾丸 論]
「もうダメだ、終わった」
── と、不尾丸が絶望したその時。
[???]
『ちょっと待ったーーー!!』
「オータムフェス」おわり……。

