ムリ。たとえ演技であっても、この傲慢野郎はムリっぽい。

 彼を睨みつけながら、もう何十度目かに「イヤイヤ」が発動された。

 ちょっと待って……。

 この偽りの家族を演じることで得る金貨は尊すぎる。

 多額の借金の返済を済ませられるばかりか、売り払われた両親の形見のいくつかだけでも買い戻せるかもしれない。

 そうね。その前にちゃんとした後見人や弁護士を雇って、いま現在両親から譲り受けたはずの屋敷に我が物顔で居座っている叔父一家を放り出せるかもしれない。