悪役令嬢は最後に微笑む



 あまりにも綺麗な顔が目の前にあるものだから、思わず顔を赤くしているとそっと唇に温もりが触れた。

 まじまじ見つめられると尚のこと顔は林檎のように赤く染まっていくのが分かる。

 そんな私を見てからかうように笑うバルに釣られて、笑顔が咲いた。
 
 
「色々と驚かせてしまっただろうがこれから先、精霊国で俺の妃として隣に居てくれるか?」


「ええ……もちろん」


「じゃあ、行こうか」


「ちょっと待って、最後に一つだけ」
 

 そう言って背筋を伸ばした私は、アーサー達に向かってそっと微笑んだ。




「ふふ……それでは、ごきげんよう」




 闇が支配し、亡骸が山になった背景はどこにもない。

 一人で戦ったリサリルが見せた最後の微笑みは、こうして幸せに繋がっていた。
 
 するとふわりと体が宙に浮く感覚を感じたかと思えば、私達は開いた窓から外へと飛び出した。

 綺麗な宝石のような星々が祝福の光を輝かせる夜空の下、私は素直になれる大切な人の隣で幸せに笑う。

 そんな私にどこかで、ありがとうと囁くそんな穏やかな声が温かく胸に広がっていった。