悪役令嬢は最後に微笑む



「バルッ……!」


 零れる涙を拭うこともなく、バルに抱き着くと彼は優しく頭を撫でてくれた。


「たくさん辛い想いをさせてすまない。だが、もう大丈夫だ」


「もう会えないんじゃないかって怖かった」

 
「だから、昨日またなと言っただろう」


「もう、勝手に何処かに行ったりしないで」
 
 
「当たり前だろう。たった一日離れただけでも、君が恋しくて仕方なかったんだから」


 涙をそっと拭ってくれたバルの手が温かくて、とても愛しい。


「この場の決着を付けよう。もう君は何も悩まなくていい。だから……俺の傍を離れるなよ?」


「うん」


 強く頷いた私を穏やかな瞳で見つめたバルは、再びアーサー達を見つめると険しい表情を浮かべた。