特にこれと言って甘い場面もなかったのは、好感度が一向に上がらなかったが故に物語は破滅へと辿り着いたせいなのか。

 バッドエンドがないはずのゲームの世界でも私は間違いを生み出し、最悪を迎えてしまったらしい。


「なにやってるんだろう、私……」


 選択肢が目に見えていたはずなのに上手くいかない。ゲームの攻略キャラに対してさえも、自分の想う選択を選べなかった。

 私は雅人の言う通りダメな女なのかもしれない。答えが用意されているゲームでさえも、この結果なんだから。

 落ち着くはずの心はどん底に落ちていた。

 バッドエンドの画面をただ見つめながら一睡もすることもなく朝を迎えた私は、いつも通りの習慣のままに仕事に行く準備をして家を出ていた。

 周囲の音も広がっているはずの綺麗な色も何もかも遮断された私の世界は、真っ暗だった。

 真っ暗な世界に落ちかけている私の背中を押すように、痛みと衝撃が走った。

 意識が朦朧とする中、視界に映ったトラックと駆け寄ってくる運転手の姿が見えた。赤く染まった手を伸ばすが、誰にも届くことなく地面に落ちる。



 ああ……こんなあっさりと終わるんだ。



 来世では、ちゃんと素直に自分の気持ちを伝えられるようになりたい――。

 そんな事を静かに願いながら、私――小野木 真美、26歳という短い生涯の幕が下りた。