会場には使い手の顔を早く見たい煌びやかな衣装を身に纏う、多くの貴族達が揃いも揃っていた。

 あちこちから聞こえてくる今日を楽しみにしていた貴族達の品のある会話を耳にしながら、会場をぐるっと見渡した。

 華やかな会場には生花の鮮やかな色で埋め尽くされ、豪華絢爛な空間は見事なものだった。一流のシェフが作った美味しそうな料理の数々も、会場の明かりに照らされて輝く飲み物も、全てが華やかに色を咲かせている。

 だけどそんな綺麗な色達は直ぐに視界から消える。

 本来であれば、婚約者として私をエスコートすべきであるアーサーが会場の真ん中で綺麗に着飾ったファナと一緒に居た。それどころか、このゲームの他の攻略キャラ達が二人を囲むように立っていた。

 接点がないにも関わらず、ここにいるということは……修正力が働いている、そういうことなのか何なのか。


「今ここに、宣言する。リサリル――お前との婚約を破棄する!」


 突如言い渡されたその言葉に、一瞬しんと静まり返ったが、すぐにざわめきの波が押し寄せた。

 その波が私の心にも伝わってきて、驚きのあまり目を見開くことしか出来ない。