金で縁取られた豪華な王宮の扉。

 その先に続いているのが、今日行われる披露会の会場だ。

 
「……いよいよね」
 
 
 目の前に大きく立ち塞がる王宮内の扉の前で、一つ深呼吸をしながら真っ赤なドレスに身を包んだ私は扉越しに聞こえてくる会場の声に負けないように気持ちを奮い立たせた。

 この扉を開いたら、待っているのはきっと何かかしらのイベントが待っている。

 何が起こるか分からない状況を前に、小さく体が震える。

 大丈夫。まだファナが暴走する最悪なルートには辿り着いていない。

 ファナが大精霊様の声を聞いていない時点で、ストーリー自体が大きく進んでないのが何よりの証拠だ。

 それに何かあっても傷付くのは私一人だけ。何かあっても戦えばいい。守りたいものを守るために。
 

 「私はリサリル・イルシス。悪役令嬢と称えられる程の、気高き女よ」

 
 自分にしか聞こえない程の小さな声で唱えながら、扉を守る騎士に開けるように合図して、ゆっくりと歩き出す。