「また、どこかで会えますかっ……!」


 赤くなる顔なんて気にせずに、後悔したくないと叫んだ言葉は彼の耳に届き小さく振り返った。

 
「ああ、必ず――から……またな」


 強い風が一瞬吹いて上手く聞き取れなかったけど、またねのただそれだけが聞けた。

 たったそれだけの言葉でも、またいつかの約束が含まれたその言葉に目が熱くなる。

 前世で訪れた突然の最悪の別れとは違う、また次がある別れ。

 それが嬉しくて見送るように手を振れば、今度こそ彼は振り返ることなく遠ざかっていく。姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けた私は、胸元で光るネックレスをそっと握り締めて、夕焼け空に浮かび始めた小さな星を見つめた。

 破滅ルートなんか絶対に歩まない。

 今日こうして素直に、気持ちを言えたからきっと大丈夫……って、どうしてあの人には素直に気持ちを言葉に出来たんだろう。今まで苦労してきたのが、こんな所で簡単に出来るなんて。


「良い兆しが見えてきた、のかな。バル……私、頑張るからね!」


 大丈夫だとでも言ってくれるように一番星が瞬いた。

 やる気に満ち溢れた私はそのまま屋敷の中へと入って、明日に備える準備に取り掛かった。

 ――そんな私を、闇に隠れた誰かに見られているとも知らずに。