あれだけ怒りに染まっていたというのに、このモフモフには最大の癒し効果があるんじゃないかって程に心が落ち着いていくのが分かる。
 

「ごめんね!バル!!」


 自分がまた悪役令嬢として振る舞い、素直になれなかったせいでバルを巻き込んでしまったことを詫びると、頬にバルが強く頭を押し付けてきた。


「謝るのは俺の方だ。俺がここに来たせいでリサリルに嫌な思いをさせてしまったな」


「違うよ。私が特訓の成果を発揮できないままでいるから……って、そう!その、色々と冷たい言葉を使っちゃったのは――」


「あんなに素直に言えていたじゃないか。あれが使い手としてこの国を守る?それを支える王子?笑えるな。言い返したリサリルを褒め散らかしてやりたいくらいだ」


 どこかご満悦な様子のバルは尻尾を振って喜んでいた。

 違うんだよ、バル。あの言葉はシナリオで……でもまあ、言った言葉に対して異論はまるでなかったけど。

 婚約者が居ながら他の女の子と一緒に居るのは人としてどうかと思うし、大体王族として他者の目があることを自覚していないのもヤバいと思ったし。

 ただ大人しく私の傍に居るだけのバルを、悪魔扱いするファナもどうかと思ったし。