ゲーム内のストーリーではこの修行中にファナが大精霊の声を聞いて、国に厄災が訪れることを知って、より自分の力を強化するために精霊との契約を結ぶ冒険に出るのよね。

 ここで様々な熱い恋をするはずだったけど、私がプレイした記憶には一切ない。
 
 精霊との契約を結んだ時に、リサリルは厄災である魔王と手を組んで精霊の使い手の力を誤った使い方をして、国を破滅へと向かわせたのが私の知るバッドエンド。

 この神殿での修業で、ファナとの力の差を見せつけられるのも面白くないと悪役令嬢を発揮するはずだったけど、それは原作の私であって、今の私じゃない。何とかしてみせると気合いを入れていると、遅れてやって来たファナとアーサーがやって来た。

 どおりで長い説明を聞かされ続けて、修業が始まらなかったわけね。主人公なしでストーリーは進まないのは当然か。ファナ達の姿に神官達が立ち去るのを見届けて、進み出したストーリーに小さく身構えた。

 何故か冷たい視線を投げつけられたけど……今は無視しようとするのに、口が勝手に動いてしまう。

 
「はあ……遅れてくるなんて使い手としてどうかと思いますけど?厄災が押し寄せてくる時に、遅れてしまったではこの国の未来はもうなくなっていましてよ?」


 なんとなくこんなセリフがあったことを思い出し、口を閉じようにももう遅い。