割れたカップの破片が地面に飛び散り、そして僅かに零れた紅茶が着ていたドレスにかかると、私は芝居がかった悲鳴を上げた。


「きゃっ!わたくしのドレスが!」


 私の悲鳴によって注目が集まる中、アーサーの心配を買おうと演技をしたのだろうけど、彼はガラスをかき集めようとするファナの元へと駆け寄った。

 婚約者である私の心配することもなかったアーサーは、少し指を切ったファナに医務室へと促した途中で一瞬こちらに鋭い視線を向けてきた。


「本日の茶会はお開きだ。リサリル、早く帰って着替えた方がいい」

 
 制圧する声でそう言ってくるアーサーに何も言えない私は、きゅっと唇を噛み締めた。原作の正規ルートを知らない私でも、今回の行動が破滅へと近づく一歩だったことは簡単に分かる。
 
 言われるまま家に帰った私は部屋に辿り着くや否や、原作の修正力から解放された私は静かに帰りを待ってくれていたバルというもふもふに飛び込んだ。


「あああ……また駄目だったぁ!!」


「おかえり、リサリル」


 落ち着いた声でそう出迎えてくれたバルは、泣き言を零す私を慰めるように優しい声を掛けてくれた。