素直に生きようと、ひたすらに前向きに考えてリサリルとして人生を歩み始めた私だったけれど、その壁がいかに高いものなのかを思い知ったのは、まさかの翌日からだった。

 転生して間もない時に感じていた違和感は、間違いではなかったと理解したところでどうしようもない。

 こちらの世界に来てから違和感に何度も抗おうとしたが、抗えないまま二週間があっと言う間に過ぎてしまう。

 今日もまた抗おうと、出された紅茶を一口啜りながら、素直に美味しいと笑顔を振り撒こうとしていたがそれは出来なかった。


「ちょっと、この紅茶を淹れたのは一体誰?こんな紅茶を淹れて恥ずかしいとは思わないの?」


「し、失礼致しました!!」


「はあ……本当にどうなっているの。まったく使えない人間が王宮に居るなんて信じられないわ。貴方、今後一切紅茶を淹れないでちょうだい。一から出直してくることを勧めるわ」


 私に睨みつけられたメイドは、肩を震わせて逃げるようにしながらティーカップを片付けた。

 全然私個人的には、高級茶葉で淹れられた紅茶に文句ひとつもない。強いて言うなら、少し紅茶の温度が熱かったその程度だ。