私が属しているのが小児科だというのもあるだろうけど、こういう話題は伊藤先生に限らず看護師さんたちも大好きだった。
聞かされてきた、ではなく、聞き出されてきたの方が正しい。
「せ、先輩のことはいいですから……!」
「ふふっ初心ねえ、鈴ちゃん。じゃあ先生、さっきのことも含めてもう少しご両親とお話してくるから。なにかあったらナースコール押してね」
「は、はあい」
伊藤先生が出ていった後、入れ違いにユイ先輩が戻ってくる。
「あ、先輩……」
「話、終わったみたいだから。……でもまだ、入ってこない方がよかったね」
どうやら気を遣って外にいてくれたらしい。
ユイ先輩は相変わらず泣き続けている愁を見て、しゅんと眉尻を垂らした。どう接するべきか悩んでいるようだけれど、そんな様子を見せる先輩もまた珍しい。
「ごめ……ごめん、姉ちゃん……っ」
「え?」
突然謝り始めた弟に狼狽えて、私はおろおろと愁へ手を伸ばす。
それに応えるようにしゃがみこんだ愁は、そのままベッドに顔を埋める。その肩は、いっそ気の毒なくらいに震えていた。小さい頃と変わらない、とまたも思う。
私と同じ色の髪を梳くと、愁はなおのこと強い嗚咽を漏らした。
「お、おれが、おれが姉ちゃんのこと、興奮させたりしたからっ」
「ち、違うよ、愁。なに言ってるの。愁のせいなわけないでしょ」
なんとなくだけれど、覚えている。
私が意識を失う前、頭に血が上った愁が、ユイ先輩へ堪えきれない鬱憤をぶつけていたこと。
たしかに愁は、前々からユイ先輩のことを嫌っていた節があった。



