モノクロに君が咲く


 ひとりは、いかにも大人しそうな丸縁眼鏡の女の子。もうひとりは、日に焼けた肌とボブヘアがなんともボーイッシュな雰囲気を醸し出す女の子。

 俯瞰してみると、三人の印象はまったく異なる。

 中心に挟まれている小鳥遊さんと並ぶと、だいぶちぐはぐな組み合わせだった。

「は、初めまして、春永先輩。鈴ちゃんからかねがねお話は聞いてます」

「そりゃもう耳にタコができるくらいにねぇ。初対面なのにまったく初めてな感じがしないし。……あ、うちの鈴がいつもお世話になってます、春永先輩」

 おそらく前者が『円香』さんで、後者が『かえちん』さんだろう。

 そう見当づけながら、俺はひとこと「よろしく」と平坦に返した。

「あの春永先輩、そちらは……?」

「そちら?」

「俺だろ。忘れんなよ、バカ」

 背後からバシッと頭をはたかれて、俺はようやっと隼の存在を思い出す。

 珍しく静かにしていたから、真面目に忘れかけていた。

「あー……えっと、隼。俺の幼なじみ」

「おう、よろしくな。小鳥遊さんは久しぶり」

「はい、ほんとお久しぶりですね。相良先輩」

 部活中、たまに気を利かせた隼が差し入れを持ってくるから、いつの間にやら顔見知りになってしまったふたり。

 否、気を利かせたとは建前だ。以前『おまえの初恋相手に興味がある』とサラッと暴露してきたこともあり、俺はいまだにこのふたりを会わせたくない。

「……で、なにしてるのこんなところで」

「あっ私たち、屋上でご飯食べよっかなぁって……まあ、思ってたんですけど。御覧のとおり閉まってて。どこで食べようかって話してたところです」

 なるほど、俺たちと同じ口か。