付き合ってからもうすぐ三週間。二日に一度は顔を見せているうちに、あっという間に夏が過ぎ去っていった。来週からは学校も再開してしまう。
まだ外は度し難い蒸し暑さが延々と蔓延っているが、それもあと一ヶ月もすれば気温も下がり始めるだろう。どうしたって、そうして季節は廻るのだ。
「今日の体調はどう?」
「大丈夫ですよ、見ての通り元気です」
ふふ、と鈴が得意げな顔をする。
一見して変わりはないように見えるが、実際は入院してからだいぶ変わった。
というより、鈴が隠してきたことを知ったから、そう思うのかもしれない。
思い返してみれば、これまでも食生活や普段の言動など、ほんの些細な日常のなかに不可解な部分は多々あった。その違和感に気づくことすらできなかった俺は、いったい好きな人のなにを見てきたのか、ひどく不甲斐なくなる。
「そっか。ならよかった」
どうやら自力で歩く体力も衰えてきているらしく、最近の鈴は基本的にベッドの上から動かず、移動は車椅子で行うようになっていた。
これが、枯桜病の恐ろしさだ。
一度進行が早まってしまえば、それはもう留まることを知らない。年を越せないということは、ここから急激に身体が衰退してゆくのだろう。ついこの間、一緒に水族館へ行ったばかりなのに、あれがもうずいぶんと昔のことのように感じられる。
「先輩が来る日はとくに元気な日が多いんですよね。気持ちの問題かなぁ」
「病は気からって言うしね。なんだったら毎日来るけど」
「そ、それはだめです。むしろ週一とかでいいんですよ。先輩、受験生だし」



