脳裏に、一枚の絵が過ぎる。
それは何度も何度も繰り返し目に焼き付けた、私にとって特別な絵。
けれど、その絵を描いた本人は、きっと私が今どんな思いでユイ先輩の言葉を聞いているのか考えもしないのだろうな、と思う。
「だから、正直、今の俺の立場って複雑で。死んだ母からの贈り物だと思うべきか、一種の呪いだと思うべきか、当時はわりと悩んでたはずなんだけどね。答えが見つからないうちに、なんかどうでもよくなっちゃった」
「……両極端、ですね。贈り物と呪いなんて」
ユイ先輩にとっては、他人から評価されることも、さして重要ではないのだろう。
それは私がこの一年半の間、時間が許す限り、先輩の隣で絵を描き続けて感じたことだった。先輩は、第三者の目なんて意にも介していないのだ。
コンクールで金賞を受賞することにこだわってきた私とは、根本的に違う。
「……でも、やっぱり、ユイ先輩はすごいです。本当に、いつだって絵に対して真摯で。だからこそ、先輩の絵はあんなにも綺麗で確立されているんでしょうね」
おそらくユイ先輩は、金賞自体になんの価値も見出していない。先生から促されて出していただけで、そこで結果を残そうとは、はなから望んでいなかった。
それゆえに、私は、いつまでもユイ先輩に追いつけない。
そしてきっと一生、同じ世界を見ることは叶わない。
どれだけ恋焦がれようとも、欲にまみれた私は、彼の隣には並べない。
「君も絵を描く人だから、わかると思うけど。俺たちは結局、どんな境地に立たされても、そのとき見えているものしか描けないでしょ」
「……視覚的なことじゃなくて、内的なことですよね?」



