なんて。

そんな事があったなんて、知らなかった私。トイレから帰った後、机上に情報のプリントがある事に気づく。

そして「あ、ここにプリントあったんだ~」と呑気に笑っていたのを、凌久くんがため息をつきながら見ていたのだった。



その日の帰り道。


帰り道、と言っても。私は寮だから、寮の玄関で靴を閉まっていた。

その時、後ろから人影が見える。足音もなく、静かに――


「え?」


急に現れた影に、思わずビックリする。そして急いで後ろを振り返った、のだけど……


「はぁ……はぁ……」

「り、凌久くん!?」


寮の玄関にもたれかかる凌久くんの姿。浅い息を何度も繰り返し吐いていて、いかにも苦しそう。


「え、どうしたの!?」


慌てて凌久くんくんに駆け寄る。すると、顔が真っ赤になった凌久くんが、私の手を取って、

パシッ

そして、潤んだ目で私を見て、こう言った。