「ううん? なんでもない」
そう……?
まあ、いいか。
「……よあ」
「ん?」
名前を呼ばれる。
彼のほうを見ると、水色の瞳が私を見つめていた。
「今日は、いつも自分がしないことにチョーセンしよっかなって思ってるんだけど……どう思う?」
「それは、あなたがつらいことなの?」
「……」
つらいことは、くるしい。
くるしいは、いたい。
いたいは、いきぐるしい。
だけど、それでも。
誰かに逃げてはいけない、と言われる。
なぜなら、人間には思考力があるから。
逃げてはいけない。あきらめてはいけない。許さなくてはならない。と、そう結論付けられる。
「あなたがやりたいなら、いいんじゃないかな」
「……そう、…かな」
「うん」
あなたがしたいことなら。あなた自身がそう思うのなら、挑戦してもいいんじゃないかな、と伝える。
「……でも、逃げたっていいんだよ。あきらめたって、許さなくたっていい」
「フツーは、真逆のこと言われるよ」
よあって、人生のこといろいろ知ってる先生って感じがする。
私を見てくる水色の瞳から、逃げるように視線をそらしながら言った。
「……そんな」
「え?」
「大層なものじゃないんだけどな」

