『夜に猫? ——あら、ふふっ、きれい』



そう言った、優しい声を。

そう笑った、優しい笑顔を。

そう細めた、あたたかい瞳を。


———私はまだ、忘れられないでいる。



『お前——こっちの世界にこないか?』

『そっちの、世界……?』

『ああ、漆黒と(くれない)の世界だ』

『……そこでなら、』

BLOOD NIGHT KINGDOM(ブレッド ナイト キングダム)

『え……うん、ねぇ』

『ん?』

『そこでなら—————』



 ▶▶▶




「……ひゅ……っ、はっ…、はぁっ……」




思い切り酸素を取り込む。

呼吸が乱れていた。

うまく息ができない。




「……ぁっ、ふ……」




過呼吸の前兆がやってきて、呼吸を落ち着ける。


っ、久しぶりに見た——あの夢……っ。




「——っ姉貴……?」

「……っあ、あぁっ……」

「姉貴、落ち着いてください、」




声をかけてから部屋に入ってきたその男子が
私の背中をやさしくなでてくれて、少し落ち着いた。




「……落ち着きましたか?」

「っ……う、ん……ありが、とう、和懸(かずか)……」




砂浦 和懸(すなうら かずか)———事情があって、同居をしているこの男子は、そう聞いてきた。