———夜の街には、ある伝説がある。
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窓の外を眺める。
桜が、これで最後とばかりに舞い落ちた。
最近はあたたかいから、もうとっくに桜は咲ききってしまった。
だけど、桜が舞い落ちるのもきれいだなと思う。
始業式。
高校一年生になったばかりの私たちは、自己紹介をしている。
運よく窓側の席になった私は、のんびりと窓の外を眺めて......
「洲守夜亞」
......窓の外を眺めて、いられるはずがなかった。
ここは中高一貫の私立学校。
高校から入った私は、世間でいう転入生だ。
「はい」
名前を呼ばれて、立ち上がる。
転入生だから、大々的に自己紹介をしなければならないらしく、教卓の横に立った。
「洲守夜亞です。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる。