𝓼𝓲𝓵𝓮𝓷𝓽 𝓷𝓲𝓰𝓱𝓽 -気まぐれ猫を溺愛したい-


「はぁぁあ......」




階段の陰に隠れて、こっそりと息をついた。

でもまた断ったし、もう会わなくていい。なにしろ、関わる理由がない。

それに、あの人たちには、一般人ではないって、ばれてしまった。訳アリだとばれてしまった。




「私の、素......正体、具体的にバレたら、私の平穏な学校生活がっ......」




野坂先輩に会ったのは、きっとたまたま。偶然だと、そう思い込ませる。

......まだ朝なのに、こんな暗かったらダメだっ。元気出せ、私っ。

パチン、と頬を叩いて、景気づけに声を出した。
「洲守夜亞、今日も一日、平穏にやり過ごしますっ......!」









前回と今回、合わせて二回断ったし、私にかかわる理由なんてない。生徒会の人たちと、会わなくてすむ。

......だった、はずなのに。




「......」

「さっきの朝ぶり、洲守夜亞ちゃん」

「......なんでここにいるんですか!?」

「生徒会室にね、おいっしいお菓子があるから、洲守夜亞ちゃんもどうかなーって思ってさ」

「......」




餌付けだ。餌付けされている。

一年生教室前の廊下。休み時間ということもあって、人気が多い。

野坂先輩を見に、女の子たちが集まってたりする。




「......ごめんなさい」

「え? なんて?」




小さくぼそりとつぶやくと、野坂先輩に顔を寄せる。

瞬間、女の子たちの悲鳴が上がる。

チャンス......っ!

それに野坂先輩が気を取られてる隙に、野坂先輩とは逆方向へ駆け出した。