夜になった。

窓の外は相変わらず雨が降っている。

本を読むために電気をつけているので、窓の中には、白々とした明かりが反射していた。

凝視すれば、水滴のひとつひとつに白い電球が映り込んでいるし、本を開く私もいる。

裸眼でそれを認識できる私の視力は、いったいどれほどだろう。

回復というレベルではなく、本当に、視力が加算されていた。2・0を軽く超えているかもしれない。少し異常だ。

もう、零時もとうに過ぎてしまっていることだろう。窓の外に広がっている街並みには時々、車のフロントランプが金に、テールランプが赤に光るばかりだ。

雨が降っているものの、それはとても小粒で、昼間のように些細なリズムも聞こえない。

世界は、あまりに静か。

恐らくでしかないが、ナースステーションで待機している看護師たちも今ごろ、あくびでもしているのではないだろうか。

つまらないことを思いながら、背表紙に添付されている紐を挟み、本を閉じる。

ぽたん、という、小気味のいい音が鳴った。